有川 浩「図書館戦争」

     

評価・状態: 得られるものがあった本★★☆



購入: 2010/ 5/10
読了: 2011/ 3/ 6

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全 3 件

「図書館戦争」は、堅牢な“知る自由”・“表現の自由”をもった現実世界を実現する

記事ページ 発行: 2013年04月20日

Book, open beautifully

有川 浩の小説「図書館戦争」映画が公開される (2013/ 4/27公開)。

「図書館戦争」の最重要設定は、劇中の法規「図書館の自由に関する宣言法」である。

登場人物 笠原と堂上の出会い=笠原が図書隊を志した理由も、
図書隊がメディア良化機関と武力・知略両面で戦い 時に傷ついている理由も、「図書館の自由に関する宣言法」による。

この劇中法規は、“知る自由”・“表現の自由”に関して記述された、現実の日本図書館協会による“図書館の自由に関する宣言”を由来としていて、その内容はほぼ同じであり、そのことは作者によって語られている(読者にもよく知られている)。「図書館戦争」に触れた者は、図書館の自由に関する宣言を知ることになる。(そして、人間は、一度知ってしまうと、知っていなかった状態に戻ることはできない。)

人は、知っていると、知っていることに反する、或いは、知っていることに関わる問題の発生に、自然に気づく(知覚する)。その問題に自然に目がいき、高い優先順位をもって取り組むべき課題に設定する。

(ここまでは、個人の内面の話であり、選挙やアンケートで問われなければ、形式知として表れない。)

「図書館戦争」は、単行本・TVアニメ劇場版アニメ文庫、そして新たに映画という媒体を通して、多くの人に提供されている。書評や口コミ(クチコミ)を通じて作品を知った人が、自発的に作品を読もう・見ようとする。映像作品は、テレビを通じて、受動的であっても多くの人に見られるであろう。

即ち、“知る自由”・“表現の自由”に関して記述された“図書館の自由に関する宣言”が不特定多数の人に共有された状態が醸成される。各個人にとって、自分だけでなく、他者も知っている状態が発生する。各個人は、自分の言葉を聞く他者がそれを知っている確率が高いと、考える。このとき、先述した問題について、他者と会話しようとする。なぜならば、既に、或いは、話せばすぐに、他者もその問題の発生に気づき、高い優先順位をもって取り組むべき課題に設定している(或いは、設定する)と予想できるからである。

その問題に関する思考は、自分の中に留まらず、他者と共有すべく言葉として発せられる。その結果、議論が深化する(両者間ではもちろん、自分のなかでも)。議論の深化を盛り込みながら発せられる言葉は、形式知として、強い伝搬力・影響力をもつ。

その結果、社会において、その問題は高い優先順位をもって取り組まれる。

そして、“知る自由”・“表現の自由”を重視し、具体的に運用する、堅牢に“知る自由”・“表現の自由”をもった社会が実現される。


日本図書館協会 “図書館の自由に関する宣言” (抜粋)

図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。

図書館は次のことを確認し実践する。

第1 図書館は資料収集の自由を有する

第2 図書館は資料提供の自由を有する

第3 図書館は利用者の秘密を守る

第4 図書館はすべての検閲に反対する

図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。



関連:
「ゲキ・ガンガー」を書け――国民文学による優れた考え方の共有
http://nhm.blog75.fc2.com/blog-entry-370.html

国民文学は魔道書である
http://nhm.blog75.fc2.com/blog-entry-371.html

「図書館戦争」シリーズの影響
http://star1ban.blog18.fc2.com/blog-entry-3297.html

知的ネット空間「アテネの学堂」 5つのリスト #前提となる思想 : 言論・表現の自由を尊重する
http://takagi1.net/chiteki-net/5lists_201008/index.html#thinking

 

正しい事をするのを、決して道徳観念に邪魔させてはならない

記事ページ 発行: 2011年05月28日

アイザック・アシモフ=著, 岡部 宏之=訳 : ファウンデーション (早川書房, 1984) p.223.

正しい事をするのを、決して道徳観念に邪魔させてはならない!


有川 浩 : 図書館戦争 (メディアワークス, 2006) p.191.

「選ぶべきものを選ぶときに選び方を躊躇する奴は口先だけだ」



 

「図書館戦争」シリーズの影響

記事ページ 発行: 2012年06月02日

日本図書館協会の見解・意見・要望 ―― 2012/05/30 武雄市の新・図書館構想について

当協会が図書館運営のよりどころとして示している「図書館の自由に関する宣言」では「図書館は利用者の秘密を守る」ことを明らかにしていますが、これは「図書館利用者は、個人のプライバシーと匿名性への権利を有するものである。図書館専門職とその他の図書館職員は、図書館利用者の身元ないし利用者がどのような資料を利用しているかを第三者に開示してはならない。」(「IFLA図書館と知的自由に関する声明」1999年3月25日国際図書館連盟理事会承認)と国際的にも公認された原則です。


私が図書館の自由に強く反応するのは、公共図書館の最大の役割はインフォームド・シチズンの育成と維持にあるという認識ゆえであることは確かだが、

有川 浩の「図書館戦争」シリーズの影響によるものが大きいだろう。

ストーリーがもつ説得力の強さを感じる。

関連:

「図書館戦争」シリーズ

有川 浩「図書館戦争」
http://homepage2.nifty.com/mukyu/books/booknet/blog-entry-2967.html

有川 浩「図書館内乱」
http://homepage2.nifty.com/mukyu/books/booknet/blog-entry-2962.html [nofollow]

有川 浩「図書館危機」
http://homepage2.nifty.com/mukyu/books/booknet/blog-entry-2968.html [nofollow]

 

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