OpenAIのAI「GPT-4o」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 谷崎潤一郎 『痴人の愛』
現代語化
「これ?別に大したもんじゃないよ、ちょっとしたものよ」
「ねえ、喉渇いたんだけど、お茶一杯飲ませてくれない?」
「今どこに住んでるの?」
「なんでそんなこと聞くの?」
「聞いても別に問題ないでしょ?」
「でもさ、なんでよ。聞いてどうするつもり?」
「別にどうもしないよ。ただちょっと気になっただけ。で、どこに住んでるの?教えてもいいでしょ?」
「いや、教えない」
「なんで?」
「私、譲治さんの好奇心を満たす義務はないし。そんなに知りたいなら私の後つけてみたら?探偵ごっこは譲治さん得意でしょ?」
「さすがにそこまではしないけどさ、でもお前がこの近くにいるってのは分かってるんだよ」
「へえ、なんで?」
「だって毎晩来て荷物運んでるじゃん」
「毎晩来るからって近所とは限らないじゃん。電車もあるし、タクシーだってあるんだから」
「じゃあ、わざわざ遠くから来てるの?」
「さあ、どうだろうねー」
「毎晩来るの迷惑?」
「迷惑ってわけじゃないけどさ…来るなって言ってもどうせ来るんだから、もうどうしようもないけど」
「そりゃそうだよ。私って意地悪だから、来るなって言われたら余計来ちゃうかも。…それとも私が来るの怖いの?」
「うん、まぁ、少しは怖いかもな…」
原文 (会話文抽出)
「今夜は何を取りに来たんだい?」
「これ? これは何でもないの、ちょっとした物なの」
「あたし、喉が渇いているんだけれど、お茶を一杯飲ましてくれない?」
「お前は何処かこの近所にいるのかね?」
「なぜそんな事を聞きたがるの?」
「聞いたって差支えないじゃないか」
「だけども、なぜよ。………聞いてどうする積りなのよ」
「どうすると云う積りはないさ、好奇心から聞いて見たのさ。―――え、何処にいるんだよ? 己に云ったっていいじゃないか」
「いや、云わないわ」
「なぜ云わない?」
「あたしは何も、譲治さんの好奇心を満足させる義務はないわよ。それほど知りたけりゃあたしの跡をつけていらっしゃい、秘密探偵は譲治さんのお得意だから」
「まさかそれほどにしたくはないがね、―――しかしお前のいる所が何処か近所に違いないとは思っているんだ」
「へえ、どうして?」
「だって、毎晩やって来て荷物を運んで行くじゃないか」
「毎晩来るから近所にいると限りゃしないわ、電車もあれば自動車もあるわよ」
「じゃ、わざわざ遠くから出て来るのかい?」
「さあ、どうかしら、―――」
「―――毎晩来ちゃあ悪いッて云うの?」
「悪いと云う訳じゃあないが、………来るなと云っても構わず押しかけて来るんだから、今更どうも仕方がないが、………」
「そりゃあそうよ、あたしは意地が悪いから、来るなと云えば尚来るわよ。―――それとも来られるのが恐ろしいの?」
「うん、そりゃ、………いくらか恐ろしくないこともない。………」