谷崎潤一郎 『痴人の愛』 「ええ、親戚でも何でもありません。僕は宇都…

OpenAIのAI「GPT-4o」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 谷崎潤一郎 『痴人の愛』

現代語化

「ううん、親戚とかじゃないんだ。俺は宇都宮生まれだけど、あいつは生粋の江戸っ子で、実家も今でも東京にあるんだよ。あいつは学校に行きたかったけど、家庭の事情で行けなくてさ。それが可哀想で、15歳の時に俺が引き取ったんだ」
「それで、今は結婚してるんですか?」
「そうそう。両親の許可もらって、ちゃんと手続きしてるんだよ。でも、あいつがまだ16歳の時だったし、歳も若すぎていきなり『奥さん』って扱うのもおかしいし、あいつ自身も嫌だろうから、最初は友達みたいな感じで過ごそうって約束してたんだ」
「ああ、そういうことだったんですね。それで誤解しちゃったんだ。ナオミさんも『奥さん』って感じじゃなかったし、本人もそう言ってなかったから、私たちも勘違いしちゃったんですよ」
「ナオミも悪いところあったけど、俺にも責任があるんだよね。俺さ、いわゆる『夫婦』ってものがあんまり面白くないと思ってて、できるだけ夫婦っぽくない暮らし方をしようって思ってたんだ。でも、それが間違いだったんだよな。もうこれからはちゃんと考えるよ。ほんとに懲りたよ」
「その方がいいですよね。で、河合さん、自分のこと棚に上げて言うのも変かもしれないけど、熊谷はあんまりいい奴じゃないから気をつけた方がいいですよ。恨みがあるわけじゃないんですけど、熊谷とか関とか中村とか、あの辺の連中は正直良くない奴らなんです。ナオミさん自体はそんなに悪い人じゃないんですよ。あいつらが彼女を悪い方向に引っ張っちゃったんです…」

原文 (会話文抽出)

「ええ、親戚でも何でもありません。僕は宇都宮の生れですが、あれは生粋の江戸ッ児で、実家は今でも東京にあるんです。当人は学校へ行きたがっていたのに、家庭の事情で行かれなかったもんですから、それを可哀そうだと思って、十五の歳に僕が引き取ってやったんですよ」
「そうして今じゃ、結婚なすっていらっしゃるんですね?」
「ええ、そうなんです、両方の親の許しを得て、立派に手続きを蹈んであるんです。尤もそれは、あれが十六の時だったので、あんまり歳が若過ぎるのに『奥さん』扱いにするのも変だし、当人にしてもイヤだろうと思ったもんだから、暫くの間は友達のようにして暮らそうと、そんな約束ではあったんですがね」
「ああ、そうですか、それが誤解の原だったんですね。ナオミさんの様子を見ると、奥さんのようには思えなかったし、自分でもそう云っていなかったから、それで僕等もつい欺されてしまったんです」
「ナオミも悪いが、僕にも責任があるんですよ。僕は世間の所謂『夫婦』と云うものが面白くないんで、成るべく夫婦らしくなく暮らそうと云う主義だったんです。そいつがどうも飛んだ間違いになったんだから、もうこれからは改良しますよ。いや、ほんとうに懲り懲りしましたよ」
「そうなすった方がよござんすね。それから河合さん、自分のことを棚に上げてこんなことを云うのも可笑しいですが、熊谷は悪い奴ですから、注意なさらないといけませんよ。僕は決して恨みがあると云うんじゃないんです。熊谷でも関でも中村でも、あの連中はみんな良くない奴等なんです。ナオミさんはそんなに悪い人じゃありません。みんな彼奴等が悪くさせてしまったんです。………」


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