OpenAIのAI「GPT-4o」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 谷崎潤一郎 『痴人の愛』
現代語化
「いやー、この前は失礼しちゃって」
「この暑いのに来てくれてありがとね。ごめんだけど、扇子持ってたら貸してくれない？ ほんと、アシスタントって意外と楽じゃないんだよね」
「でも浜さん、結構上手だよね。アシスタントの才能あるんじゃない？いつから練習してんの？」
「俺？ もう半年くらいやってるよ。でも君みたいに器用ならすぐ覚えるよ。ダンスって男がリードするから、女の子はついていけばいいだけなんだよ」
「ところで、ここにいる男の人たちって、どんな人たちなの？」
「ああ、これね」
「大体この人たちは、東洋石油株式会社の社員が多いみたいだよ。杉崎先生の親戚がその会社の役員をやってて、そのつながりで紹介されてるらしいんだ」
「じゃあ、あそこにいる髭の紳士も社員なの？」
「いや、あの人は違うよ。あの人はドクターなんだ」
「ドクター？」
「うん、その会社の健康管理とかやってる医者だよ。ダンスは運動になるからって、むしろそのためにやってるみたい」
「へぇ、そうなんだ、浜さん」
「そんなに運動になるもんなの？」
「ああ、めっちゃ運動になるよ。ダンスしてると冬でも汗だくだくで、シャツがびしょびしょになるくらいだからね。特にシュレムスカヤ夫人のレッスンはすごいハードだからさ」
「その夫人、日本語わかるの？」
「いや、ほとんどわかんないよ。だいたい英語でやってる」
「英語かぁ…スピーキング苦手なんだよね」
「大丈夫だって、みんな同じだよ。シュレムスカヤ夫人もすごいブロークン・イングリッシュで、俺たちよりひどいくらいだから、全然心配いらないよ。それに、ダンスの練習なんて言葉なんていらないしさ。ワン、ツー、スリーで、あとは身振りでわかるからね」
「おや、ナオミさん、いつ来てたの？」
「あ、先生！ 杉崎先生、ちょっと！」
「あの、先生、紹介します―――河合譲治です」
「ああ、そう、どうも」
原文 (会話文抽出)
「やあ、入らっしゃい」
「や、この間は失礼しました」
「この暑いのによく来てくれたね、―――君、済まないが扇子を持ってたら貸してくれないか、何しろどうも、アッシスタントもなかなか楽な仕事じゃないよ」
「でも浜さんはなかなか上手ね、アッシスタントの資格があるわ。いつから稽古し出したのよ」
「僕かい？ 僕はもう半歳もやっているのさ。けれど君なんか器用だから、すぐ覚えるよ、ダンスは男がリードするんで、女はそれに喰っ着いて行けりゃあいいんだからね」
「あの、此処にいる男の連中はどう云う人たちが多いんでしょうか？」
「はあ、これですか」
「この人たちは大概あの、東洋石油株式会社の社員の方が多いんです。杉崎先生の御親戚が会社の重役をしておられるので、その方からの御紹介だそうですがね」
「じゃあ何ですか、あのあすこに居る髭の生えた紳士も、やっぱり社員なんですか」
「いや、あれは違います、あの方はドクトルなんです」
「ドクトル？」
「ええ、やはりその会社の衛生顧問をしておられるドクトルなんです。ダンスぐらい体の運動になるものはないと云うんで、あの方は寧ろその為めにやっておられるんです」
「そう？ 浜さん」
「そんなに運動になるのかしら？」
「ああ、なるとも。ダンスをやってたら冬でも一杯汗を掻いて、シャツがぐちゃぐちゃになるくらいだから、運動としては確かにいいね。おまけにシュレムスカヤ夫人のは、あの通り練習が猛烈だからね」
「あの夫人は日本語が分るのでしょうか？」
「いや、日本語は殆ど分りません、大概英語でやっていますよ」
「英語はどうも、………スピーキングの方になると、僕は不得手だもんだから、………」
「なあに、みんな御同様でさあ。シュレムスカヤ夫人だって、非常なブロークン・イングリッシュで、僕等よりひどいくらいですから、ちっとも心配はありませんよ。それにダンスの稽古なんか、言葉はなんにも要りゃしません。ワン、トゥウ、スリーで、あとは身振りで分るんですから。………」
「おや、ナオミさん、いつお見えになりまして？」
「ああ、先生、―――ちょいと、杉崎先生よ」
「あの、先生、御紹介いたします、―――河合譲治―――」
「ああ、そう、―――」