岡本綺堂 『半七捕物帳』 「お早うございます。毎日うっとうしいことで…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「おはようございます。毎日うるさいことで」
「困ったもんです。天気が悪いせいで、どこもかしこも病人だらけみたいで、店も忙しいでしょう」
「うちの商売繁盛は喜ぶべきことなのかよくわかりません」
「実は少し親分さんに知恵を拝借したいことがあって、相談にきたんですけど……。いや、俺のことじゃなくて、ウチに雇ってるお徳って女中なんです」
「ああ、なんだい、まあ話してみな」
「ご存じかもしれませんが、あのぉ徳って女は生麦の生まれで、17の頃からウチに奉公に来て、5年近くも勤めてます。とても真面目なんで、ウチでも気に入って使ってます」
「その女中のことは俺も聞いてるよ……」
「ウチでもああいう奉公人が欲しいと思ってるんですよ。うちの女房なんて、普段から羨ましがってます。そのお徳が何かやらかしたんですか?」
「本人に何かあったわけじゃないんですけど、その妹のことなんです……。ちょっと事情を話しますね。お徳にはお通って妹がいて、それも今年17になって、この正月から奉公に出たんです。桂庵の外神田の相模屋ってとこです。江戸に出ると、まずウチのお徳のところに行って、その相模屋にはお徳が連れて行ったんですよ。そしたら、その相模屋さんが、『ちょうどいい奉公口がある』って言うんです。『江戸っ子はダメで、実家は江戸から5里か7里は離れてないとダメ。年齢は若くて、寡黙で真面目な子に限る。それから、1年の出入りでホイホイ辞めるのは困る。必ず3年以上は長くやるって約束しないとダメ。その代わり、夏冬の着物はこっちで用意して、年に3両の給料をやる』って」
「ふんふん」

原文 (会話文抽出)

「お早うございます。毎日うっとうしいことでございます」
「どうも困りましたね。時候が不順で、どこにも病人が多いようですから、お店も忙がしいでしょう」
「わたくしどもの商売繁昌は結構と申してよいか判りません」
「実は少し親分さんにお知恵を拝借したいことがございまして、その御相談に出たのでございますが……。いえ、わたくしの事ではございませんが、家で使って居りますお徳という下女のことで……」
「はあ、どんなことだか、まあ、伺って見ようじゃありませんか」
「御承知でもございましょうが、あのお徳という女は生麦の在の生まれでございまして、十七の年からわたくしの家へ奉公にまいりまして、足かけ五年無事に勤めて居ります。至って正直なので、家でも目をかけて使って居ります」
「あの女中のことは私も聞いていますが……」
「家でもどうかしてああいう良い奉公人を置き当てたいものだと云って、うちの嬶なんぞもふだんから羨ましがっている位ですよ。そのお徳がどうかしましたかえ」
「本人には別に何事もないのでございますが、その妹のことに就きまして……。まあ、こうでございます。お徳にはお通という妹がございまして、これも今年十七になりましたので、この正月から奉公に出ました。桂庵は外神田の相模屋という家でございます。江戸へ出ますと、まずわたくしのところの姉を頼って来まして、その相模屋へは姉が連れて行ったのでございました。しますと、その相模屋の申しますには、丁度ここにいい奉公口がある。江戸者ではいけない、なんでも親許は江戸から五里七里は離れている者でなければいけない。年が若くて、寡言で正直なものに限る。それから一つは一年の出代りで無暗に動くものでは困る。どうしても三年以上は長年するという約束をしてくれなければ困る。その代りに夏冬の仕着せはこっちで為てやって、年に三両の給金をやる」
「ふむう」


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