岡本綺堂 『半七捕物帳』 「なるほど、それで大抵わかった。そこで、平…

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青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「なるほど、それで大体わかった。そこで、平七が先に庄五郎を殺しといて、それから戻ってきて庄五郎の家の戸を叩いて、自分がこれから行くように見せかけた……その流れはわかるんだけど、平七が戸を叩いたあとで、庄五郎が帰ってきて声かけたっていう話なんだろ?平七が殺したんだったら、その後で庄五郎が戻ってくるわけねえだろ。幽霊じゃあるめえし」
「いや、俺も最初はそう思ったんだけど、詳しく聞いたらつまらん話なんだよ」
「だんだん調べると、それは藤次郎って奴の冗談だったらしいよ」
「冗談か……」
「ああ。3人の中では建具屋の藤次郎って奴が一番最後に出てきたんだ。それが冗談半分に庄五郎の声真似して鋳掛屋の門を叩いたら、女房は寝ていて小僧が返事した。女房だったら何かからかうつもりだったかもしれないけど、小僧じゃつまんないし、藤次郎もそのまま行っちゃったんだって。本人が自供してるんだから間違いねえ。こんなつまんない冗談をする奴がいるから、捜査も時々こじれるんだよね」
「なるほど。じゃ、熊、面倒だけど高輪の一件をもう一度、最初から詳しく話してくれ」
「腑に落ちないところがありますかね?」
「いや、ご苦労さん。俺はこれからちょっと用事があるから、今日はもう帰ってくれ。もしかしたら、明日はお前の家を訪ねるかもしれないから、留守にしないで待っててくれ」
「あいよ、了解です」
「庄さん、庄さん」
「平さんは来なかったか?」
「おかみさん、おかみさん」
「おい、お仙」
「ちょっと出かけてくるから着物を出して」
「これからどこに行くの?」
「熊のところまで。明日はって約束してたけど、早く行っといた方がいいや。最近は日が長いからな」

原文 (会話文抽出)

「なるほど、それで大抵わかった。そこで、平七が先ず庄五郎を殺して置いて、それから引っ返して来て庄五郎の家の戸をたたいて、自分はこれから行くように見せかけた……その段取りは判っているが、聞けば平七が戸をたたいて行ったあとで、亭主の庄五郎が帰って来て声をかけたというじゃあねえか。平七が殺してしまったものならば、そのあとへ庄五郎が帰って来そうもねえものだ。まさか幽霊でもあるめえ」
「いや、わっしも初めはそう思ったが、あとで聞いてみると詰まらねえ話さ」
「だんだん調べると、それは藤次郎という奴の冗談だそうですよ」
「冗談だ……」
「ええ。三人のなかでは建具職の藤次郎という奴が一番あとから出て来たんです。そいつが冗談半分に庄五郎の声色を使って、鋳掛屋の門をたたくと、女房は寝入っていて小僧が返事をした。女房だったならば、何か戯うつもりだったかも知れねえが、小僧じゃ仕方がねえので、藤次郎もそのまま行ってしまったんだそうですよ。それは当人の白状だから間違いはありますめえ。こんなつまらねえ冗談をする奴があるので、ときどきに探索もこじれるんですね」
「むむ。そこで、熊。面倒でもその高輪の一件をもう一度、初めからすっかり委しく話してくれ」
「まだ腑に落ちねえことがありますかえ」
「いや、御苦労。おれはこれから少し用があるから、きょうはもう帰ってくれ。ひょっとすると、あしたはお前の家へ尋ねて行くかも知れねえから、家をあけねえで待っていてくれ」
「あい。ようがす」
「庄さん、庄さん」
「平さんは来なかったか」
「おかみさん、おかみさん」
「おい、お仙」
「ちょいと出てくるから着物を出してくれ」
「これから何処へ出かけるの」
「熊のところまで行ってくる。あしたと約束したのだが、思いついたら早い方がいい。このごろは日が長げえから」


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