GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「あら、平さん。どこに行ってたの?」
「親方に会った?」
「いや、庄さんにも藤さんにも会わない」
「さっきこの戸を叩いて、親方を呼んだのはお前さん?」
「おう」
「家を出る時にここの門を叩いたら、庄さんはもう出たって言ってたから、すぐに大木戸に行ってみたけど、誰も来てないんだ。夜が明けなくて、犬が吠えてるし。道に立ってるのもまずいから、海辺のあき茶屋に入って、床几に腰かけてたんだ。そしたら、今日は珍しく早起きしたせいか少し眠くなって、床几で寝ちゃった。そしたら世間が騒がしくなって目が覚めたら、もう朝になってた。近くの茶屋も開け始めてる。びっくりして急いで出たけど、庄さんも藤さんもいない。寝てる間に置き去りにされたのかと思って、とりあえず聞きに来たんだ。やっちまったよ」
「それは違うよ、藤さんも今ここに尋ねてきたよ」
「さっきまでは2人に置き去りにされたのかと思って悔しがってたけど、平さんがここにいると分かると、そうでもないみたい。まさか庄さん1人で行くわけないもんね」
「そうですよね……。親方1人で行くわけないわ。どうしたんでしょうねえ」
原文 (会話文抽出)
「庄さんはどうしましたえ」
「あら、平さん。おまえさん、今までどこにいたの」
「内の人に逢いましたかえ」
「いや、庄さんにも藤さんにも逢わねえ」
「さっきこの戸を叩いて、内の人を呼んだのはお前さんでしょう」
「むむ」
「出がけにここの門を叩いたら、庄さんはもう出たというから、すぐに大木戸へ行ってみると、まだ誰も来ていねえのさ。夜は明けねえし、犬は吠えやがる。往来なかに突っ立っているのも気がきかねえから、海端のあき茶屋の葭簀の中へはいって、積んである床几をおろして腰をかけているうちに、けさはめずらしく早起きをしたせいか、なんだかうとうとと薄ら眠くなってきたので、床几の上へ横になってついとろとろと寝込んでしまった。そのうちに世間がそうぞうしくなって来たので、眼をさますと、もう夜は明けている。となり近所の茶屋では店をあけはじめる。驚いて怱々に飛び出したが、庄さんも藤さんも見えねえ。こいつは寝ているあいだに置き去りを食ったのかと、ともかくもこっちへ聞きあわせに来たわけさ。いや、飛んだ大しくじりをやってしまった」
「それが大違い、藤さんも今ここへ尋ねて来たんですよ」
「今までは二人に置き去りを食ったかと内々は恨んでいたが、平さんがこうしているのを見ると、そうでもないらしい。まさかに庄さん一人で行きゃあしめえ」
「そうですとも……。内の人ひとりで出かけて行く道理がありませんわ。ほんとうにどうしたんでしょうねえ」