岡本綺堂 『半七捕物帳』 「そういう仔細をうかがいますると、まことに…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「なるほど、事情をお聞きすると、本当に残念です。何度も言いますが、先約があるものですから……。手付金もいただいておいて、今さら破談というのも商売冥利に反しますが、とにかく明日先方が来たら一応相談してみましょうか」
「そうしていただければ何よりですが……」
「手付金を返せば先方が納得すればいいですが、もし納得しなければ、手付金の二倍、三倍でも……。掛け合いの状況によっては、十倍でも構いません。なんとかまとまるように相談してください。さっき申した通りの事情なので、こちらは金銭には糸目をつけません。できれば屋敷の名前は出さずに済ませたいのですが、どうにもあなたの手に負えなくて、あなたが直接話さないとダメなら、私がその人に会っても構いません。いずれにしろ、どうか協力してください」
「わかりました。精一杯頑張ってみます」
「とりあえずこれだけ置いておきますので、残りは明日持参します。それから、あの仮面はそちらに譲ってくださいね」
「足元を見て高い値段を言うわけにもいきません。今朝のお客様には150両でお願いしていたので、やはりそのお値段でお願いしたいと思います」
「承知しました。では、重ね重ね頼みます」

原文 (会話文抽出)

「そういう仔細をうかがいますると、まことにお気の毒に存じられますが、くどくも申す通り、もはや先約がござりますので……。手金まで頂戴いたして置きながら、今さら破談と申すのは商売冥利、はなはだ難儀でござりますが、ともかくも明日先様がおいでになりましたら、一応は御相談いたしてみましょうか」
「そうしてくれれば何よりだが……」
「手金を戻しただけで、先方が素直に納得してくれればよし、万一不得心のようであったならば、手金の二倍増し、三倍増しでも……。掛け合いの模様によっては、十倍増しでも苦しくない。なんとか纏まるように相談してくれ。唯今も申す通りの仔細であれば、当方では金銭に糸目はつけぬ。なるべくは屋敷の名を出したくないと存ずるが、どうでも貴公の手にあまって、手前の直談でなければ埒があかぬようならば、手前がその人に会ってもよい。いずれにしても、なにぶん一つ働いて貰いたい」
「かしこまりました。せいぜい働いてみましょう」
「ともかくもこれだけ預けて置いて、あとは明日持参いたすが、あの仮面は手前の方へ譲ってくれるな」
「足もとを見てお高いことを申し上げるわけにもまいりませぬ。けさほどのお客様には百五十両にねがいましたのでございますから、やはりそのお値段でお願い申しとう存じます」
「承知いたした。では、くれぐれも頼む」


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