岡本綺堂 『半七捕物帳』 「じゃあ、どうしてもいけねえと云うのかえ」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「じゃあ、どうしても行けないって言うのか?」
「じゃあ仕方ない、これから先、何があっても俺は知らんぞ。後で恨むんじゃねえぞ」
「おい。ちょっと待ってくれ」
「誰だ、お前は……」
「お前は千次さんじゃないか?」
「人の名前を聞く前に、自分の名前を名乗れ。それが礼儀だ」
「礼儀を説くのなら、名乗らざるを得ませんね。私は三河町の半七です」
「やあ、三河町の親分でしたか。失礼いたしました。私は神明の千次です」
「そうだろうと思った。さあ、こっちへ来い」
「今聞いてた限りでは、お前はさっきの帳場で何やら大きな声を出してたようだな。喧嘩でもしたのか?」
「あなたに聞かれるとは思わず……」
「どうか聞き流してください」
「うーん、どうもお前の方が怪しいようだな」
「済みません。どうかお許しください」
「お許しと言っても、うーん、それで済むかどうか。どうも最近お前の評判がよくないんだよな。とりあえず近くの番屋まで来てもらおうか」
「親分、ダメです。番屋に連れて行ってどうするんですか?」
「どうするか。状況によっては帰さないかもしれない」
「私は悪いことはしていません。この私でもお上の仕事をやったことがあります……」
「お上の仕事をやったってことは、石町の金蔵を捕まえたことを言ってるのか?」
「それも私は知ってるが、今さっきあそこで何を言ったんだ。私は全部わかってるぞ」
「恐れ入りました」
「恐れ入ったなら、もう一度ここで正直に言え。さもなくば番屋に連れて行って白状させるぞ」

原文 (会話文抽出)

「じゃあ、どうしてもいけねえと云うのかえ」
「じゃあ仕方がねえ、この先き、何事が起こっても俺あ知らねえ。その時になって恨みなさんな」
「兄い。ちょいと待ってくれ」
「誰だ、おめえは……」
「おめえは千次さんじゃあねえか」
「ひとの名を訊く前に、自分の名を云え。それが礼儀だ」
「礼儀咎めをされちゃあ名乗らねえわけにも行かねえ。わっしは三河町の半七だ」
「やあ、三河町の親分でしたか。お見それ申して、飛んだ失礼をいたしました。わっしは神明の千次でごぜえます」
「そうらしいと思った。まあ、こっちへ来てくれ」
「今聞いていりゃあ、おめえはさつきの帳場で何だか大きな声をしていたじゃあねえか。喧嘩でもしたのかえ」
「おまえさんに聞かれるとは知らねえで……」
「どうかまあお聞き流しを願います」
「むむ、どうもおめえの方がよくねえようだな」
「相済みません。どうぞ御勘弁を願います」
「ただ御勘弁と云っても、むむ、そうかとばかりも云っていられねえ。どうも此の頃はおめえの評判がよくねえからな。ともかくもそこらの番屋まで来て貰おうか」
「親分、いけねえ。番屋へ連れて行って、どうするのです」
「どうするものか。都合によっちゃあ帰さねえかも知れねえ」
「わっしは悪い事をしやあしません。これでもお上の御用を勤めたこともあるので……」
「御用を勤めたというのは、石町の金蔵を指したことを云うのか」
「それはおれも知っているが、今あのさつきへ行って何を云ったのだ。おれはみんな知っているぞ」
「恐れ入りました」
「恐れ入ったら、もう一度ここで正直に云え。さもなけりゃ番屋へ連れて行って云わせるぞ」


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