岡本綺堂 『半七捕物帳』 「三河町さんでございますか。まあ、どうぞこ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「三河町さんですか?どうぞこちらへ」
「親分は?」
「はい」
「ちょっと親分に会いたいんだけど……」
「はい」
「留守なの?」
「はい」
「どこへ行った?用事かな?」
「いえ」
「お前らも知ってるだろうけど、先月23日に牢から逃げ出した奴がいる。そのことでちょっと話したいんだけど、親分が留守じゃ困るな。いつ頃帰ってくるかわかる?」
「はい。実は町内の人と一緒に……」
「講と一緒に身延に参拝に行きました」
「なるほどここは法華宗か。身延参りはご信心だね。それで、いつ出発したの?」
「昨日の朝に出発しました」
「じゃあすぐには帰らないだろうな」
「帰りは富士川を下るって言っていました」
「今年の正月に石町の金蔵を捕まえたのは誰だ?」
「あの時は親分と一緒に駒吉と私が行きました」
「金蔵ってどんな奴だっけ?」
「32、3くらいの色黒でガリガリの奴です。屋根葺きをしてただけあって、身軽で、番屋に連れていかれた時にも、『おれは酔ってたからお前らに捕まったんだ。屋根に飛び乗れば、そこから屋根づたいに江戸中逃げ回ってみせる』とか大きいこと言ってました」

原文 (会話文抽出)

「三河町さんでございますか。まあ、どうぞこちらへ」
「親分は内かえ」
「へえ」
「親分にちょいと逢いてえのだが……」
「へえ」
「留守かえ」
「へえ」
「どこへ出かけた。御用かえ」
「いいえ」
「おめえ達も知っているだろうが、先月の二十三日に牢抜けをした奴がある。その事について少し話してえのだが、親分が留守じゃあ仕様がねえ。いつごろ帰るか判らねえかね」
「へえ。実は町内の人に誘われまして……」
「講中と一緒に身延へ御参詣にまいりました」
「成程ここは法華だね。身延まいりは御信心だ。そうして、いつ立ったのだね」
「きのうの朝、立ちました」
「それじゃあすぐには帰るめえ」
「帰りは富士川下りだと云っていました」
「ことしの正月に、石町の金蔵を捕りに行ったのは、誰だね」
「あのときに親分と一緒に行ったのは、駒吉とわたくしです」
「金蔵というのはどんな奴だ」
「三十二、三で色のあさ黒い、痩せぎすな奴です。屋根の上の商売をしていただけに、身の軽い奴だそうで、番屋に連れて行かれた時にも、おれは酔っていたから手めえ達につかまったのだ。屋根の上へ一度飛びあがりゃあ、それからそれへと屋根づたいに江戸じゅうを逃げて見せるなんて、大きなことを云っていました」


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