岡本綺堂 『半七捕物帳』 「金蔵というのはどんな奴だか知らねえが、牢…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「金蔵ってどんな奴かは知らねぇけど、牢から逃げ出した以上は命がけだ。いつまでも江戸にうろうろしてられるわけねぇ。草鞋穿いたと思うから、当分は仕返しに来る余裕はねぇだろう。みんな安心しろよ」
「ところがさ」
「千次さんの友達が西久保の切通しで、金蔵に似た奴を見たらしいんだ。あいつが近くうろついてるらしいから大変だってんで、千次さんも急いでどこかに隠れたんだって」
「でもさ、あんたの家にまで仕返しに来るわけねぇだろ。金蔵は行き合い強盗だから、あんたとは関係ないはずだ」
「ウチには来ないかもしれないけど、もしかしたら三甚の方に行くかもしれないってんで、娘が泣いて騒いでるんです……」
「これが一般人なら、相談に乗ることもあるけど、年が若くても三甚は立派な用心棒だ。チンピラの仕返しを怖がって仲間の知恵を借りたなんて言われたら、世間の人に顔向けできねぇ。もちろんあんたの独断でやったんだろうけど、そんなことしたら三甚の沽券に傷がつくようなもんだ。娘の好きな男を恥かかせるなんてするなよ。それに、三甚には子分がいるはずだ。その子分たちが親分の体を守ればいいじゃないか。他人に頼むことなんてあるか?」
「それは仰るとおりなんですけど……」
「でも、最近の子分は頼りにならない奴が多いみたいで……」

原文 (会話文抽出)

「金蔵というのはどんな奴だか知らねえが、牢抜けをした以上は我が身が大事だ。いつまでも江戸にうかうかしちゃあいられめえ。きっと草鞋を穿いたろうと思うから、まあ当分は仕返しなんぞに来る筈はねえ、みんなも安心したらいいだろう」
「ところがお前さん」
「千次さんのお友達が西の久保の切通しで、金蔵に似た奴の姿をちらりと見たそうで……。あいつが近所をうろ付いているようじゃあ大変だと云うので、千次さんも早々にどこへか隠れてしまったのでございます」
「それにしても、おまえさんの家にまで仕返しに来ることはあるめえ。金蔵は行き合い捕りになっているのだから、お前さんの家に係り合いはねえ筈だ」
「わたくしの家へは来ないかもしれませんが、もしや三甚さんの方へでも来るようなことがあると大変だと申して、娘は泣いて騒いで居りますので……」
「これが堅気の素人なら、なんとか相談に乗ることもあるが、たとい年は若いにしろ、三甚も一人前の御用聞きだ。科人の仕返しが怖くって、仲間の知恵を借りたなぞと云われちゃあ、世間に対して顔向けが出来ねえ。勿論おまえさんの一料簡で出て来たのだろうが、そんな事をするのは三甚の男を潰すようなものだ。娘の可愛い男に恥を掻かせちゃあいけねえ。第一、三甚にも相当の子分がある筈だ。その子分たちが楯になって、親分のからだを庇ってやるがいいじゃあねえか。他人に頼むことがあるものか」
「それはもう仰しゃる通りでございますが……」
「その子分衆も此の頃は頼りにならないような人が多いので……」


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