岡本綺堂 『半七捕物帳』 「いえ、勘蔵が怪我をしたということはわたく…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「はい、勘蔵さんが怪我をしたのは私も聞いてます。見舞いに行きたいと思ってたんですけど、こちらもお見苦しい通りですし、まだ行けてないんです。それで、勘蔵さんが何かお願いしてたんですか?」
「特に頼まれたわけではないんだけど、あまりに可哀想だから何とかしてほしいと思うんだけど、番頭さん、どうでしょう?」
「わかりました」
「主人とも相談して、何とかします。そうすると、勘蔵さんから直接お願いされたわけではないということですね」
「変な人ですね。念押ししなくてもいいじゃないですか。勘蔵が頼めばそれでいいのかい?」
「ふーん、どうせあんなお店の番頭ってのは、何もわかってない獣みたいなやつが多いもんだ」
「獣と言えば、あの熊はどうなったんでしょうね。侍は切り倒したまま帰ってしまったけど、あの死骸はどうなったんでしょう。犬や猫とは違うから、むやみに捨てたりはしないでしょうけど、誰が持っていったのかな。品川辺の連中かな?」
「そうですね」
「品川とは限らないでしょう。世の中には欲深い奴が多いから、何か金になると思って、大騒ぎに乗じて持ち去ったかもしれませんよ。そもそもあの熊はどこから来たんでしょうね?」
「それは分からない。江戸のど真ん中に突然熊が出るわけないでしょう。香具師の家で飼ってたのが、火事に驚いて逃げ出したんでしょう。伊豆屋でさっき聞いた話では、あの熊のせいで20人以上が怪我したそうですよ。こういう噂はどんどん大きくなるものですが、半分としても10人くらいは大怪我したみたいですよ。ばかな話ですよ」<ctrl100>

原文 (会話文抽出)

「いえ、勘蔵が怪我をしたということはわたくしも聞いて居ります。見舞にでも行ってやろうと思いながら、なにしろこちらも御覧の通りの始末だもんですから、まだ其の儘になっているようなわけでございます。そのことに就きまして、勘蔵がお前さんに何かお願い申したのでございますか」
「別に頼まれたわけじゃあねえが、あんまり可哀そうだから何とかしてやって貰いたいと思うんだが、番頭さん、どうですね」
「判りました」
「いずれ主人とも相談しまして、なんとか致しましょう。そう致しますと、勘蔵から別にお願い申した訳ではございませんのですね」
「変な奴ですね。いやに念を押すじゃありませんか。勘蔵が頼めばどうだというんでしょう」
「むむ、どうであんなところの番頭なんていうものは、判らねえ獣物が多いもんだ」
「いや獣物といえば、あの熊はどうなったろう。侍は叩っ切ったままで行ってしまったんだが、その死骸はどうしたろう。犬や猫とは違うんだから、むやみに取り捨ててもしまわねえだろうが、誰が持って行ったかしら。品川辺の奴らかな」
「そうでしょうね」
「品川とばかりは限らねえ。世間には慾の深けえ奴が多いから、何かの金にする積りで、どさくさまぎれに引っ担いで行ったかも知れませんよ。一体あの熊はどこから出て来たのでしょうね」
「それは判らねえ。江戸のまん中にむやみに熊なんぞが棲んでいる訳のものじゃあねえ。どこかの香具師の家にでも飼ってある奴が、火におどろいて飛び出したんだろう。伊豆屋でさっき聞いたんじゃあ、あの熊のために二十人からも怪我をしたそうだ。こんな噂はとかく大きくなるもんだが、話半分に聞いても十人ぐらいは飛んだ災難にあったらしい。馬鹿なことがあるもんだ」


青空文庫現代語化 Home リスト