GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「本当にあの子は可哀想なことをしましたよ」
「村じゃ評判の美人で、おとなしくて親孝行でしたが、十五夜の夜に芒を取りに出たばっかりに、あんなことになってしまって……」
「十五夜は朝から分かってるのに、日が暮れてから芒を取りに行くってこともないでしょ」
「あの娘はいくつだったんだっけ?」
「19の厄年です」
「19歳と言えばもう子どもじゃない。お月様を拝んでから芒を取りに行くほど浮かれててもおかしくないはずだ。親孝行でも、おとなしくても、19歳と言えば盛りだ。おまけに評判の美人だっていうんだから、周囲が放っとかないだろう。あの娘が死んだのは、どうやら他に理由があるみたいで世の中では専ら噂してるけど、おかみさんは知らない?」
「親分さんもそんなこと聞いてたんですか?」
「世間の口に戸は立てられない。事故死なのか、自殺したのか、自然と人が知ってるもんだよ。高巌寺でもそんなことを言ってたっけ」
「高巌寺で……。和尚さんですか、銀蔵さんですか?」
「まあ、どっちでもいい」
「ねえ、おかみさんも知ってるんでしょ?」
原文 (会話文抽出)
「ねえ、おかみさん。御用でおれは時々こっちへも廻って来るが、もともとこの村の落穂を拾っている雀でねえから、土地の様子はあんまりよく知らねえ。なんでも先月の十五夜の晩に、おこよといういい娘が川へ陥って死んだというじゃあねえか」
「ほんとうにあの娘は可哀そうなことをしましたよ」
「村では評判の容貌好しで、おとなしい孝行者でしたが、十五夜の晩に芒を取りに出たばっかりに、あんなことになってしまって……」
「十五夜は朝から判り切っているのに、日が暮れてから芒を取りに出るということもねえじゃねえか」
「あの娘は幾つだったね」
「十九の厄年です」
「十九といえばもう子供じゃあねえ。お月さまの顔を拝んでから芒を取りに行くほどうっかりしてもいねえ筈だ。親孝行でも、おとなしくても、十九といえば娘盛りだ。おまけに評判の容貌好しというんだから、傍が打っちゃって置かねえだろう。あの娘が死んだのは、なんでもほかに訳があるんだと世間じゃあ専ら噂しているが、おかみさんは知らねえのかね」
「親分さんもそんな事をお聞き込みでしたか」
「世間の口に戸は閉てられねえ。粗相で死んだのか、身を投げたのか、自然に人が知っているのさ。高巌寺でもそんなことを云っていたっけ」
「高巌寺で……。和尚様ですか、銀蔵さんですか」
「まあ、誰でもいい」
「ねえ、おかみさんも知っているんだろう」