岡本綺堂 『半七捕物帳』 「やあ、常陸屋か。だんだんと日が詰まって来…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「やあ、常陸屋。だんだん忙しくなってきたな」
「ご仕事お忙しいでしょうね」
「早速ですが、何やら新石下のほうで検視があったそうなんですが……。私は親戚に不幸があって、昨日まで土地を留守にしてたもんですから、さっぱり様子が分かりませんで……」
「検視は八州の方で扱ったので、私もよく知らないけど、その顛末だけは詳しく知ってる。新石下の百姓が5人死んで、2人は生き返った」
「なんだか不思議な話ですね。小女郎狐っていうのは私も前から聞いてますけど、その狐が仇討ちに5人も殺すなんて、今の世の中では信じられませんね。眉唾物ですよ。あなたはどう思います?」
「私も特に意見はない」
「ほかにも詮索しようがないらしいので、とりあえずそれに決めたけど、煙で窒息死したことは確か。狐の祟りはともかく、松葉いぶしは本当らしい。生き残った2人は覚えてないそうだけど、自分たちが火を起こしたのを忘れてるんだろう。なんせ泥酔してたって言うから仕方ないよ」
「犯人いるじゃん」
「小女郎狐っていう立派な犯人がいるでしょ」
「ねえ、宮坂さん」
「その小女郎狐を私が探索してみますよ。狐なんて絶対どこかにいますよ」
「ふ〜ん。こっちが古狸で、向こうが狐、同類だな」
「冗談言わないで。真剣ですよ。古狸による狐狩りということで、常陸屋の働きを見てやってくださいよ。いずれまた来ますが、ご代官様にもよろしくお伝えください」

原文 (会話文抽出)

「やあ、常陸屋か。だんだんと日が詰まって来るな」
「なにかとお忙がしいでございましょうね」
「早速でございますが、何か新石下の方に御検視があったそうで……。わたくしは親類に不幸がございまして、きのうまで土地を留守にして居りましたもんですから、一向に様子が判りませんのでございますが……」
「検視は八州の方で取り扱ったので、わたしもよくは知らないが、その顛末だけは詳しく知っている。新石下の百姓どもが五人死んで、ふたりは生き返った」
「なんだか妙なお話ですね。小女郎狐ということはわたくしも前から聞いては居りますが、その狐がかたき討に五人の男を殺すなんて、今の世の中にゃあちっと受け取れませんね。それこそ眉毛に唾ですよ。あなたのお考えはいかがです」
「わたしにも別に考えはない」
「ほかに詮議のしようもないらしいので、まずそれに決めてしまったのだが、煙にむせて死んだには相違ない。狐の祟りはどうだか知らないが、松葉いぶしはほんとうだ。生き残った二人はそんな覚えがないというけれども、自分たちが火を焚いたのを忘れているのだろう。なにしろ正体もないほどに酔っていたというからしようがあるまい」
「下手人はあるじゃありませんか」
「小女郎狐という立派な下手人があるんでしょう」
「ねえ、宮坂さん」
「及ばずながらわたくしがその小女郎狐を探索しようじゃございませんか。狐はきっとどっかにいますよ」
「むむ。こっちが古狸で、相手が狐、一つ穴だからな」
「洒落ちゃあいけません。真剣ですよ。ともかくも古狸の狐狩というところで、常陸屋の働きをお目にかけようじゃありませんか。いずれ又伺いますが、御代官様にもよろしくお願い申します」


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