GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「俺がやった成田の羊羹、置いてあったんだってよ」
「なんで来たんですかね?」
「お熊が遠州屋で働いてるって言うから、もしかしたら縁があるかな?と思ったんだけど、わざわざ寄り道する理由はないですよね」
「さっきの話だと、常陸屋の奴らがここに聞き込みに来てたとか」
「そうしたら遠州屋のほうにも行って、お熊のことは調べたでしょうよ。泥棒殺人の伝蔵と付き合ってたってわかれば、遠州屋もすぐクビにすると思うけど、まだ働いてるんですか?」
「遠州屋って40くらいだよな?」
「そう。40過ぎのおっさんで、家族もいるのに、みっともない女にだらだらして、借金もしてるらしい。お熊にも手ぇ出してるんじゃねえか?」
「むむ、笹川の息子の話だと、お熊って海風で育ったのに、色白で美人なんだそうだ」
「それだ、それだ!」
「親分、絶対そうですよ。嫁の手前、お熊をどっかの二階に預けて、兄貴さんに相談しに来たんじゃないですか?年の瀬に呑気な野郎だな」
「でも、羊羹持ってるってことは成田には行ったんだろうな」
「そう言わなきゃ家を出られないから、無理やりお参りに出かけたんでしょ。あいつ、途中で仲間とはぐれたとか言ってるけど、最初から一人だったに決まってますよ」
「まあ、そんなにうらやましがんなよ」
「うらやましいんじゃなくて、あいつはいろんな屋敷からいい加減なもんを盗んできて、ぼろもうけしてるって噂で、道具屋仲間からも泥棒扱いされてますからね」
原文 (会話文抽出)
「親分。あの遠州屋はなんだか変な奴ですね」
「自分のくれた成田の羊羹が、あすこに置いてあるので驚いたろう」
「何しに来たのでしょう」
「お熊は遠州屋に奉公していると云うから、まんざら縁のねえ事もねえが、なんでわざわざ寄り道をしやあがったかな」
「今の話を聞くと、常陸屋の奴らがここへ詮議に来たと云うじゃあありませんか」
「そうすれば一応は遠州屋の奉公さきへも行って、お熊を調べたろうと思います。主殺しの伝蔵に係り合いのあると知れたらば、遠州屋でもすぐに暇を出しそうなものだが、相変らず平気で使っているのでしょうか」
「遠州屋は四十ぐらいだろうな」
「そうでしょう。四十面をさげて、女房もあり、娘もあるくせに詰まらねえ女なんぞに引っかかって、たびたびぼろを出すという評判ですよ。あいつ、お熊にも手を出しているのじゃありませんかね」
「むむ、笹川の息子の話じゃあ、お熊というのは汐風に吹かれて育ったにも似合わねえ、色の小白い、眼鼻立ちの満足な女だそうだ」
「それだ、それだ」
「親分、きっとそうですよ。女房子の手前があるから、どっかの二階へでもお熊を預けて置くつもりで、兄きの所へその相談に来たのかも知れませんぜ。節季師走に暢気な野郎だ」
「だが、羊羹を持っているところを見ると、成田へは行ったのだろう」
「そう云わなけりゃあ家を出られねえから、柄にもねえ信心参りなぞに出かけたに違げえねえ。あの狢野郎、途中で連れに別れたなんて云うのは嘘の皮で、始めから自分ひとりですよ」
「まあ、そう妬くなよ」
「妬くわけじゃあねえが、あいつは方々の屋敷へいい加減ないか物をかつぎ込んで、あこぎな銭もうけをするという噂で、道具屋仲間でも泥棒のように云われている奴ですからね」