岡本綺堂 『半七捕物帳』 「親分さん、御苦労でございます。まあ、おか…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「親分さん、お疲れさまです。どうぞ、お掛けください」
「昨日は川でスゴイ掘り出し物したって聞いたよ」
「俺だって一生に一度はそんな掘り出し物をしてみたいもんだ」
「いや、あんた。あの女が髪振り乱して、恐ろしい顔して、死んでも離さないように風呂敷包みを抱え込んでるの見たら、欲も得もなくなりますよ。金ろうそくでも金塊でも、あんなものもらったら、きっと因縁が残って祟られますぜ」
「32、3の小粋な女だってね」
「今は堅気の女将さんでも、若い頃は大変な苦労をしたんだろうなと思いました。木綿の着物だけど、小綺麗にしてたし……。まぁ、見た感じでは裕福な人みたいでしたね」
「裕福なのは当たり前だ。金の棒抱えてるんだから」
「んじゃ、その晩のことを親分にちょっと話してください」
「そもそも、その女は自ら飛び込んだのか、誤って落ちたのか、それとも誰かに突き落とされたのか、心当たりはありませんか?」
「それは昨日も検視の役人に訊かれたんですが、まったく心当たりはないんです。私はただ、ドボーンって水の音を聞いただけで、すぐ提灯を持って行ったんですが、男か女かもわからなくて……」

原文 (会話文抽出)

「親分さん、御苦労でございます。まあ、おかけ下さい」
「きのうはこの川で大変な掘り出し物をしたというじゃあねえか」
「おれも一生に一度はそんな掘り出し物をしてえものだ」
「いえ、お前さん。あの女が散らし髪になって、恐ろしい顔をして、死んでも放すまいというように、風呂敷包みをしっかり抱えていたのを見ると、慾も得もありません。金の蝋燭でも、金の伸べ棒でも、あんな物を貰ったら、きっと執念が残って祟られますよ」
「三十二三で、小粋な女だそうだね」
「今は堅気のおかみさんでも、若い時にゃあ泥水を飲んだ女じゃあないかと思われました。木綿物じゃあありますが、小ざっぱりした装をして……。まあ、見たところ、困る人じゃあ無さそうでしたね」
「困る筈はねえ。金の棒をかかえている位だ」
「まあ、その晩のことを親分にひと通り話してくれ」
「一体、その女は自分で飛び込んだのか、粗相で落ちたのか、誰かに突き落されたのか、おめえに心当りはねえのかね」
「それはきのうも検視のお役人から御詮議がありましたが、まったく何も心当りが無いのです。わたくしは唯、ざぶんという水の音を聞いただけで、すぐに提灯を持って出ましたが、男か女か判らないので……」


青空文庫現代語化 Home リスト