岡本綺堂 『半七捕物帳』 「お角の居どころは知れました。浅草の茅町一…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「お角の居場所がわかりました。浅草の茅町一丁目、第六天の門前に小さい駄菓子屋があるんです。おそよって婆さんと、お花って孫娘の13、4歳くらいの子が二人で暮らしてて、その2階に3畳くらいの部屋があるんですけど、そこにお角がいるんです」
「商売は巾着切りか」
「若い頃は矢場女とか旦那取りとかいろいろやってたみたいだけど、今は決まった亭主も商売もなくて、巾着切りが本業でしょうね。女のくせに酒飲んで、ばくち打って、特にばくちが大好きだから、他人の財布を稼いだくらいじゃ、たいしていい酒も飲めないみたいですよ。でも今年の7月くらいには、近所の近江屋って呉服屋の通い番頭をつかまえて、すごく立派な蟹の彫り物のついた財布を出して、30両とか50両とか巻き上げたそうです。駄菓子屋の婆さんも近所の評判の悪さに困っちゃって、なんとか追い出そうとしてるんですけど、お角がなかなか出なくて困ってるみたいで、俺にもしょっちゅう愚痴をこぼしてましたよ」
「人目につかないように駄菓子屋の3畳で暮らしてるってことは、お角もそんなに裕福じゃないみたいだな」
「でも、あの外人の財布にはいくら入ってたんだっけ。もちろん日本の金に両替してたんだろうけど、外国の金じゃ使い道ないだろ。両替屋に持っていったらまずいし。巾着切りの方は現場を見たわけじゃないから仕方ないけど、あの馬の一件、それが本当にお角の仕業かどうか、今は全然手がかりがないんだよね。それで、お角の相棒ってどんな奴だ?」
「駄菓子屋の婆さんの話じゃ、色男とか相撲取りとかわかんないけど、いろんな男が4、5人訪ねてくるんだって……。たまにその狭い3畳でサイコロ振ったりするので、婆さんも困ってるみたいですよ。来る奴らの住所も名前も、婆さんはよくわかんないけど、その中で一番仲良くしてるのが長さんと平さんで……。平さんってのがお角の男らしいですけど……」
「そいつの住所もわかんねぇのか?」
「詳しくはわかんないけど、その平公は本郷の片町あたりの屋敷にいる奴だって話です……」
「本郷の屋敷にいる……」

原文 (会話文抽出)

「お角の居どころは知れました。浅草の茅町一丁目、第六天の門前に小さい駄菓子屋があります。おそよという婆さんと、お花という十三四の孫娘の二人暮らしで、その二階の三畳にお角はくすぶっているのです」
「商売は巾着切りか」
「若い時から矢場女をしたり、旦那取りをしたり、いろいろのことをやって来たようですが、この頃は決まった亭主も無し、商売も無し、まあ巾着切りが本職でしょうね。女のくせに酒を飲む、博奕を打つ、殊に博奕が道楽と来ているのだから、他人の巾着を稼いだくらいじゃあ、あんまり旨い酒も飲めねえようですよ。それでもこの七月頃にゃあ、近所の近江屋という呉服屋の通い番頭を引っかけて、蟹の彫り物の凄いところを見せて、三十両とか五十両とか捲き上げたそうです。駄菓子屋の婆さんも近所の手前、お角の評判の悪いのに困り切って、なんとかして追い出そうとしているが、お角がなかなか動かねえので持て余しているらしく、わっしにも頻りに愚痴を云っていましたよ」
「人の目につかねえ為でもあろうが、駄菓子屋の三畳にくすぶっているようじゃあ、お角という女もあんまり景気がよくねえと見えるな」
「だが、異人の紙入れに幾らあったかな。勿論こっちの金に両替えしてあったろうが、外国の金だったら使い道はあるめえ。うっかり両替屋へ持って行ったら藪蛇だ。巾着切りの方は現場を見たわけでもねえから仕様がねえが、例の馬の一件、それが確かにお角の仕業だかどうだか、今のところじゃあ一向に手がかりがねえ。そこで、お角の相棒はどんな奴だ」
「駄菓子屋の婆さんの話じゃあ、色男だか相摺りだか知らねえが、いろいろの男が四、五人たずねて来るそうで……。時によると、その狭い三畳で賽ころを振ったりするので、婆さんもひどく弱っているようでしたよ。来る奴らの居どころも名前も、婆さんはよく知らねえのですが、そのなかで一番近しく出入りをするのは、長さんと平さん……。平さんというのがお角の男らしいと云うのですが……」
「そいつの居どころもわからねえのか」
「確かにはわからねえが、その平公は何でも本郷片町辺の屋敷にいる奴だそうで……」
「本郷の屋敷にいる……」


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