岡本綺堂 『半七捕物帳』 「親分、夢じゃあねえ、確かにそれですよ。安…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「親分、夢じゃねぇすよ。絶対それです。安みたいな職人と違って、みんな大店の若旦那だから、さすがに自分で出るとは言わねぇ。太鼓持ちか落語家の誰かが、金に目がくらんで、その役をやったに違いねぇ。冗談だろうがイタズラだろうが、騒ぎすぎなんすよ」
「でも、その太鼓持ちか落語家は、かなり度胸がないとできない芸だ。まじめじゃ無理だから、気違いのふりをしたんだろうけど、川越の屋敷から町奉行所へ連れて行かれる途中で縄抜けしやがった。これも普通じゃできない芸だから、なにかわけありの奴に違ねぇ。庄太に調べさせれば、大体わかるだろ」
「お葉も関係してるんすかね?」
「川越次郎兵衛の笠があるってことは、お葉もなにか関係してるっぽい。とにかく、お葉はあの件を知ってて、増村の息子を脅してるんだろう。それが表向きになっちまったら、済まねぇことになるわ。本人だけじゃなく、親も巻き添え食うのは目に見えてる。息子も今頃後悔して青ざめてっからよ。そこを狙って、お葉は口止め料をゆすってるんだ。しかも相手を見て、高額請求してるんだろうな。あいつ、ろくな奴じゃねぇ」
「お葉と一緒に増村へ行った奴って誰すか?」
「わかんねぇけど、あの辺をうろついてる奴か、女衒仲間の悪い奴だろう。亭主が中気で寝てるって言うから、お葉も男の一人や二人くらいは用意してるかもしれない」

原文 (会話文抽出)

「親分、夢じゃあねえ、確かにそれですよ。安のような職人とは違って、みんな大店の若旦那だから、さすがに自分が出て行くと云う者はねえ。取巻きの太鼓持か落語家のうちで、褒美の金に眼が眩れて、その役を買って出た奴があるに相違ねえ。洒落にしろ、悪戯にしろ、飛んだ人騒がせをしやあがるな」
「だが、その太鼓持か落語家は、相当に度胸がなけりゃあ出来ねえ芸だ。まじめじゃあ助からねえと思って、気ちがいの振りをしたのだろうが、川越の屋敷から町奉行所へ引き渡される途中で縄抜けをしている。これが又、誰にでも出来る芸じゃあねえから、なにかの素姓のある奴に相違ねえ。庄太に調べさせたら、大抵わかるだろう」
「お葉も係り合いがあるのでしょうね」
「川越次郎兵衛の笠がある以上、お葉もなにかの係り合いがありそうだ。ともかくもお葉はその一件を知っていて、増村の息子を嚇かしているのだろう。それが、表向きになりゃあ、唯じゃあ済まねえ。本人は勿論、親たちだって飛んだ巻き添えを食うのは知れたことだ。息子も今じゃあ後悔して、蒼くなっているに相違ねえ。そこへ附け込んで、お葉は口留め料をゆすっている。それも相手を見て、大きく吹っかけているのだろう。よくねえ奴だ」
「お葉と一緒に増村へ行ったという奴は何者でしょう」
「それは判らねえが、あの辺をごろ付いている奴か、女衒仲間の悪い奴だろう。亭主が中気で寝ていると云うから、お葉も男の一人ぐらいは拵えているかも知れねえ」


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