岡本綺堂 『半七捕物帳』 「まだ降っていやあがる。親分、これからどう…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「まだ降ってんじゃん。親分、これからどうすんすか?」
「お葉んちは後回しにして、俺が急になんか思いついた」
「増村の息子に聞いても黙ってっから、友達に聞いてみろよ。近所に呉服屋とか小間物屋の子どもと遊んでるとか言うんだから、それを調べてったら大体わかるだろ。そいつらと一緒にいる太鼓持ちとか落語家の奴らで、なんか怪しい奴いないか調べてくれ。お葉に聞くのはそれからです」
「了解です、任しといてください」
「じゃぁ、これで帰るんすか?」
「これじゃ浅草まで酒飲みに行ったようなもんじゃん」
「酒も飲み足りねぇだろうけど、我慢しろよ。これで城の件もなんか手がかりが見つかりそうだな……」
「そっすかね?」
「まだわかんねぇの?」
「わかんねぇっすね」
「じゃぁ、まぁぶらぶら歩きながら話そうか」
「実は今、あの番頭の話を聞いてたら、ふっと頭に思い浮かんだことがあるんすよ。あんたたちが聞いたら、夢みたいなおかしな推測だと思うかもしれないけど、その推測がバッチリ当たることがよくあんのよ」
「で、今回の推測は……」
「まぁ、こうだ」
「城の件は、あのガキどものいたずらじゃね?」
「とんでもないいたずらだ。考えられねぇよ。いくらなんでもそんなこと……」
「だから夢みたいだとかなんとか言ってるんすよ。俺の推測はこうです。あんたも知ってるだろけど、この頃世の中がどんどん変わってきて、つまんねぇ遊びじゃ物足りなくなってきやがった奴らが増えてきた。何年前の田舎源氏の一件なんざ良い例だ。みんな痛い目に遭いながらいまだに懲りてねぇらしい。増村の息子をはじめ、あいつら金持ちの息子ばっかだ。大抵の遊びは飽きて、変わった趣向ねぇかって言ってるうちに、誰からともなく、たぶん増村の息子だろうけど、城の玄関前で踊ったら50両、歌ったら100両やるって冗談半分に言い出して、やる奴が現れたんだろうよ」
「間違いないすね」
「俺もすっかり忘れてた。あいつがいたずら好きだったっけ。親分、記憶力いいな」

原文 (会話文抽出)

「まだ降っていやあがる。親分、これからどうします」
「お葉の家はあと廻しにして、おれが急に思い付いたことがある」
「増村の息子に訊いても口を結んでいるかも知れねえから、その友達を詮議してみろ。近所に呉服屋や小間物屋の遊び仲間があると云うから、それを訊いて廻ったら大抵は判るだろう。その連中が取巻きに連れ歩いている太鼓持や落語家のうちに、素姓の変っている奴があるか無いか、それを洗ってくれ。お葉に掛け合いを付けるのは、それから後のことだ」
「ようがす。受け合いました」
「じゃあ、これで引き揚げですかえ」
「これじゃあ浅草まで酒を飲みに来たようなものだ」
「その酒も飲み足りねえだろうが、まあ我慢しろ。これでお城の一件もどうにか当たりが付きそうに思うのだが……」
「そうですかねえ」
「まだ判らねえか」
「判りませんねえ」
「じゃあ、まあ、ぶらぶら歩きながら話そうか」
「実は今、あの番頭の話を聴いているうちに、おれはふいと胸に泛かんだことがある。おめえ達が聴いたら、あんまり夢のような当て推量だと思うかも知れねえが、その当て推量が見事にぽんと当たる例がたびたびあるから面白い」
「そこで、今度の当て推量は……」
「まあ、こうだ」
「お城の一件は、あの息子たちの趣向だな」
「悪い趣向だ。途方もねえ。なんぼ何だってそんな事を……」
「それだから夢のようだと云っているのだ。おれの当て推量はまあ斯うだ。おめえも知っているだろうが、この頃は世の中がだんだんに変わって来て、道楽もひと通りのことじゃあ面白くねえと云う連中が殖えて来た。三、四年前の田舎源氏の一件なんぞがいい手本だ。みんなひどい目に逢いながら、やっぱり懲りねえらしい。増村の息子をはじめ、その遊び仲間は工面のいい家の息子株だ。大抵の遊びはもう面白くねえ、なにか変った趣向はねえかと云ううちに、誰が云い出したか、たぶん増村の息子だろう、お城の玄関前で踊った奴には五十両やるとか、歌った奴には百両やるとか、冗談半分に云い出したのが始まりで、おれがやるという剽軽者があらわれたらしい」
「違げえねえ」
「わっしはすっかり忘れていた。そうだ、そうだ。石屋の安の野郎の二代目だ。親分は覚えがいいな」


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