岡本綺堂 『半七捕物帳』 「次右衛門は、死にぎわに何か云ったそうだね…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「次右衛門は、死ぬ前に何か言ったんだって?」
「はい」
「声が小さくてよく聞こえなかったんだけど……。なんか『大……トシ……トシゾウ』って言ったみたいなんですけど……」
「そしたら大工のトシゾウだな」
「でも、そのトシゾウって奴、コロリで死んだって話ですけど……」
「お前は2、3日前の方に見たって言ってんじゃねえか」
「それは人違いだったかもしれないんで、ハッキリしたことは言えません」
「大工のトシゾウって奴は生きてんのか?」
「コロリで死んで、火葬場まで運んで、骨上げした奴が、生きてるとも思えないけど、関口屋の長屋にもトシゾウの幽霊が出たとか言ってるから、生きてる可能性もあるのかな」
「次右衛門が死ぬ前に、トシゾウって名前を出した以上、多分トシゾウが殺したんだと思う。そこで『大』ってのは大工の『大』なのか、煙草屋のダイキチの『大』なのか、そいつを考えなきゃなんねえ。多分ダイキチだろうな」
「そうなんですかね?」
「とにかくこの件にはダイキチが関わってるのは間違いない。もう大体見当がついた。さっさとダイキチを捕まえちまえ。人間は図々しいくても、男娼上がりの弱っちい野郎だ。お前一人で十分だろう。いや、待て。逃がしてどっかの寺とかに逃げ込まれると面倒だ。俺も一緒に行く」

原文 (会話文抽出)

「次右衛門は、死にぎわに何か云ったそうだね」
「はい」
「それが微かな声でよく聴き取れなかったのですが……。なんでも『大……年……年造』と云ったように聞こえましたが……」
「そうすると大工の年造だね」
「ですが、その年造という人は、コロリで死んだそうですから……」
「おめえは二、三日前の晩に見たと云うじゃあねえか」
「それは人違いかも知れませんので、どうもはっきりした事は申し上げられません」
「大工の年造という奴は生きているんでしょうか」
「コロリで死んで、焼き場へ運んで、骨揚げをして来た奴が、生きていると云うのも不思議だが、関口屋の長屋へも年造の幽霊が出たと云うから、どうかして生きているのかも知れねえ」
「次右衛門が死にぎわに、年造と云った以上、どうも年造が殺したとしか思われねえ。そこで『大』と云ったのは大工の『大』か、煙草屋の大吉の『大』か、それを考えなけりゃあならねえ。おそらく大吉だろうな」
「そうでしょうか」
「なにしろ此の一件には大吉が係り合っているに相違ねえ。おれにはもう大抵見当がついた。早く大吉を挙げてしまえ。人間はずうずうしくっても、男娼あがりのひょろひょろした野郎だ。おめえ一人でたくさんだろう。いや、待て。下手に逃がして何処かの寺へでも逃げ込まれると面倒だ。おれも一緒に行こう」


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