GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『MENSURA ZOILI』
現代語化
「ほら、日本人の小説のデータが出てるぞ。久米っていう人の『銀貨』って小説、評価低いぞ。」
「なんで?」
「人生のくだらない発見とか書いてあって、大人ぶってるって書いてある。」
「かわいそう。」
「君の『煙管』って小説も載ってるよ。」
「何て書いてあった?」
「常識がないって書いてある。あと、早くたくさん作品を出そうとしすぎだって。」
「へぇー。」
「どの作家も画家も、この測定器で測られるとダメなんだよ。ごまかせないからね。どれだけ自分で良くても、機械がダメだって言ったらダメなんだ。」
「でも、その測定器が本当に正しいってどうやって分かるの?」
「簡単なことだよ。モオパッサンの『女の一生』みたいな名作を測ってみれば分かる。絶対最高の評価が出るから。」
「それだけ?」
「それだけだよ。」
原文 (会話文抽出)
「不相変、メンスラ・ゾイリの事ばかり出ていますよ。」
「ここに、先月日本で発表された小説の価値が、表になって出ていますぜ。測定技師の記要まで、附いて。」
「久米と云う男のは、あるでしょうか。」
「久米ですか。『銀貨』と云う小説でしょう。ありますよ。」
「どうです。価値は。」
「駄目ですな。何しろこの創作の動機が、人生のくだらぬ発見だそうですからな。そしておまけに、早く大人がって通がりそうなトーンが、作全体を低級な卑しいものにしていると書いてあります。」
「お気の毒ですな。」
「あなたの『煙管』もありますぜ。」
「何と書いてあります。」
「やっぱり似たようなものですな。常識以外に何もないそうですよ。」
「へええ。」
「またこうも書いてあります。――この作者早くも濫作をなすか。……」
「おやおや。」
「いや、あなた方ばかりでなく、どの作家や画家でも、測定器にかかっちゃ、往生です。とてもまやかしは利きませんからな。いくら自分で、自分の作品を賞め上げたって、現に価値が測定器に現われるのだから、駄目です。無論、仲間同志のほめ合にしても、やっぱり評価表の事実を、変える訳には行きません。まあ精々、骨を折って、実際価値があるようなものを書くのですな。」
「しかし、その測定器の評価が、確かだと云う事は、どうしてきめるのです。」
「それは、傑作をのせて見れば、わかります。モオパッサンの『女の一生』でも載せて見れば、すぐ針が最高価値を指しますからな。」
「それだけですか。」
「それだけです。」