芥川龍之介 『MENSURA ZOILI』 「そうですか。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『MENSURA ZOILI』

現代語化

「へぇ、そうなんだ。」
「そうだよ。ゾイリアって国、昔から有名なんだ。ホメロスの悪口を言ったのも、そこの学者らしいし。今でもその人の銅像とか立ってるんだって。」
「すごい古い国なんだ。」
「そうなんだ。神話によると最初はカエルばっかりだったらしいけど、アテナが人間に変えたんだって。だからゾイリアの人ってカエルみたいだって言う人もいるけど、そんなことないと思うよ。記録に残ってるのはホメロスを批判した人が最初かな。」
「今もすごい文明国なんだ?」
「もちろんだよ。特にゾイリア大学はすごいんだって。最近、価値を測る機械を作ったらしいんだけど、それがすごいらしいよ。ゾイリア日報にも載ってた。」
「価値を測る機械?何それ?」
「文字通り、価値を測る機械だよ。主に小説とか絵の価値を測るんだって。」
「どんな価値が?」
「芸術的な価値だよ。もちろん他の価値も測れるけど。ゾイリアではそれを『ゾイリア価値測定器』って呼ぶんだって。」
「それって見たことある?」
「ないよ。ゾイリア日報のイラストでしか見たことない。普通の計量器みたいだって。」
「すごい便利じゃん。」
「めっちゃ便利だよ。文明の利器ってやつさ。」
「これがあれば、ダメな作品を作ってるやつはバレちゃうね。だって、価値が数字で出るんだから。」
「そうだよ。ゾイリアでは税関に置いて、外国から入ってくる本とか絵を全部測ってるんだって。特に日本の作品は評価が低いらしいよ。俺たちからしたら、日本の作家や画家ってすごいと思うんだけどね。」

原文 (会話文抽出)

「そうですか。」
「そうですとも。ゾイリアと云えば、昔から、有名な国です。御承知でしょうが、ホメロスに猛烈な悪口をあびせかけたのも、やっぱりこの国の学者です。今でも確かゾイリアの首府には、この人の立派な頌徳表が立っている筈ですよ。」
「すると、余程古い国と見えますな。」
「ええ、古いです。何でも神話によると、始は蛙ばかり住んでいた国だそうですが、パラス・アテネがそれを皆、人間にしてやったのだそうです。だから、ゾイリア人の声は、蛙に似ていると云う人もいますが、これはあまり当になりません。記録に現れたのでは、ホメロスを退治した豪傑が、一番早いようです。」
「では今でも相当な文明国ですか。」
「勿論です。殊に首府にあるゾイリア大学は、一国の学者の粋を抜いている点で、世界のどの大学にも負けないでしょう。現に、最近、教授連が考案した、価値測定器の如きは、近代の驚異だと云う評判です。もっとも、これは、ゾイリアで出るゾイリア日報のうけ売りですが。」
「価値測定器と云うのは何です。」
「文字通り、価値を測定する器械です。もっとも主として、小説とか絵とかの価値を、測定するのに、使用されるようですが。」
「どんな価値を。」
「主として、芸術的な価値をです。無論まだその他の価値も、測定出来ますがね。ゾイリアでは、それを祖先の名誉のために MENSURA ZOILI と名をつけたそうです。」
「あなたは、そいつをご覧になった事があるのですか。」
「いいえ。ゾイリア日報の挿絵で、見ただけです。なに、見た所は、普通の計量器と、ちっとも変りはしません。あの人が上る所に、本なりカンヴァスなりを、のせればよいのです。額縁や製本も、少しは測定上邪魔になるそうですが、そう云う誤差は後で訂正するから、大丈夫です。」
「それはとにかく、便利なものですね。」
「非常に便利です。所謂文明の利器ですな。」
「こう云うものが出来ると、羊頭を掲げて狗肉を売るような作家や画家は、屏息せざるを得なくなります。何しろ、価値の大小が、明白に数字で現れるのですからな。殊にゾイリア国民が、早速これを税関に据えつけたと云う事は、最も賢明な処置だと思いますよ。」
「それは、また何故でしょう。」
「外国から輸入される書物や絵を、一々これにかけて見て、無価値な物は、絶対に輸入を禁止するためです。この頃では、日本、英吉利、独逸、墺太利、仏蘭西、露西亜、伊太利、西班牙、亜米利加、瑞典、諾威などから来る作品が、皆、一度はかけられるそうですが、どうも日本の物は、あまり成績がよくないようですよ。我々のひいき眼では、日本には相当な作家や画家がいそうに見えますがな。」


青空文庫現代語化 Home リスト