GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「おい、幸。とんでもないことになっちまったな」
「本当に驚きました。お信を早く探し出せば、こんなことにはならなかったのに……」
「それに浅井の屋敷もいいところじゃない。今は家督を継いでいる小太郎という人が、2、3日前から家出してるのを黙ってるなんてないよ。八丁堀の旦那衆に内々に知らせてもらっておいてくれれば、なんとか気をつけることもできたものを……。そうは言っても、それからそれからと悪いことが続いて、屋敷の方でも面目が丸つぶれだから、旦那方には知らせないで、内々で小太郎の行方を捜してたんでしょうが……。もうこうなれば仕方がない。3000石の屋敷も潰れるよ」
「潰れるでしょうね」
「前の当主の水死は不意の事故としても、またこの始末だ。結局助かる見込みはないでしょう」
「考えてみると、私も悪かった。この間、小梅の長五郎の話聞いた時に、すぐに旦那に知らせておけばよかった。そうしたら、旦那から浅井の屋敷に内通して、若主人の出入りに厳重に目を光らせたかもしれない。屋敷の評判にかかわる話だから、決して他言しないでくれって長五郎に頼まれて、私もなんだか気の毒になって、今まで黙ってたのがかえってよくなかったみたいだ。この商売は情に流されてちゃいけないな」
「最近はこんな大失態をやらかしたことはありません。それで、親分。これからどうします?」
「まだこれで幕は降りない。お信が生きていた以上は、千太もどこかから這い出してくるかもしれない」
「となると、やっぱり深川を見張りますか?」
「まあ、そうだ。寅吉の家近くのほかはないだろう」
原文 (会話文抽出)
「男は近所の浅井さまの御子息らしい。女は三河屋のお信だ」
「おい、幸。飛んでもねえ事になってしまったな」
「まったく驚きました。お信を早く探し出せば、こんな事にゃあならなかったのですが……」
「それに浅井の屋敷もよくねえ。今じゃあ家督を相続している小太郎という人が、二、三日前から家出しているのを黙っていることはねえ。八丁堀の旦那衆の方へ内々で沙汰をして置いてくれりゃあ、なんとか用心の仕様もあったものを……。そうは云うものの、それからそれへと悪い事つづきで、屋敷の方でも面目ねえから、旦那方へは沙汰無しで、内々そのゆくえを探していたのだろうが……。もうこの上は仕方がねえ。三千石の屋敷も潰れる」
「潰れるでしょうね」
「先代の主人の水死は不時の災難としても、又ぞろこの始末だ。所詮助かる見込みはあるめえよ」
「考えてみると、おれも悪かった。このあいだ小梅の長五郎の話を聴いた時に、すぐに旦那に知らせて置けばよかった。そうしたら、旦那の方から浅井の屋敷へ内通して、若主人の出入りを厳重に見張らせたかも知れねえ。お屋敷のお名前にもかかわる事だから、決して他言してくれるなと長五郎に泣いて頼まれたので、おれもなんだか可哀そうになって、今まで口を結んでいたのが却っていけなかったようだ。この商売は涙もろくちゃあいけねえな」
「近頃こんなドジを組んだことはありません。そこで、親分。これからどうします」
「まだこれで幕にゃあならねえ。お信が生きていた以上は、千太もどこから這い出して来るか判らねえ」
「それじゃあ、やっぱり深川を見張っていますか」
「まあ、そうだ。寅吉の家の近所を見張っているほかはあるめえ」