岡本綺堂 『半七捕物帳』 「そういうわけだから、なんでも正直に云って…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「そういうわけだから、とにかく正直に話してください」
「あなたは奥方は立派な方だと言いますが、今のところ、その奥方が一番疑われてるんです。奥方のことを思うなら、知ってることを全部話してくださいよ。私も男です。屋敷に迷惑がかかるようなことは絶対に他言しませんから、私にだけ話してくれると思って話してください」
「でも、確かな証拠もないことは……」
「いや、あなたの話したことをすぐに証拠にするわけじゃありません。念のため聞いておくだけのことです。あなたのお嬢さんはこの頃ここを訪ねてきましたか?」
「去年の暮れに参りました」
「一人できましたか?」
「お信という女中を連れてきました」
「お信ってどんな女だ?」
「容姿は悪くないし、しっかりしてるみたいです」
「自分の付き添いとして連れてくるということは、あなたのお嬢さんが気に入ってるんですね」
「別に気に入ってるわけではありません。屋敷の中では話せない秘密があるので、今日の付き添いに連れてきたんですって言って、奥でしばらく2人きりでお話してました」
「どんな話をしていたかわかりませんでしたか?」
「私達は遠慮して離れていましたので、2人とも小さな声で小声で話し合ってましたから、どんな話をしていたかわかりませんでした」
「帰る時はどんな様子でしたか?」
「2人とも顔色が悪くて……。特に、お信は真っ青な顔をしていました」
「お嬢さんはそれっきり来ていませんか?」
「春になってからは一度も来てません。去年の暮れに顔を見せたのが最後です」<ctrl99>

原文 (会話文抽出)

「そういうわけだから、なんでも正直に云ってくれねえじゃあ困る」
「おめえは奥さまは結構な方だと云うが、今のところ、その奥さまが一番疑われているのだ。奥さまの為を思うならば、知っているだけの事をみんな云うがいいじゃあねえか。おれも男だ。屋敷の迷惑になるような事は決して他言しねえから、おれだけに云うと思って話してくれ」
「でも、確かな証拠もないことは……」
「いや、おめえの云ったことをすぐに証拠にするわけじゃあねえ。ただ心得のために聞いて置くだけのことだ。おめえの娘は此の頃ここへ訪ねて来たかえ」
「去年の暮れにまいりました」
「ひとりで来たのか」
「お信という女中を連れて来ました」
「お信はどんな女だ」
「容貌の悪くない、なかなかしっかり者のようです」
「自分の供に連れて来るようじゃあ、おめえの娘の気に入りなんだね」
「別に気に入りというわけでもございません。お屋敷内では話すことの出来ない内証話があるので、きょうの供に連れて来たのだと申しまして、奥で暫く差し向かいで話して居りました」
「どんな話をしていたか判らなかったかね」
「わたくし共はあちらへ遠慮して居りましたので、二人とも小さな声でひそひそと話し合って居りましたので、どんな話をしていたのか一向に判りませんでした」
「帰る時はどんな様子だった」
「二人とも顔色がよくないようで……。取り分けてお信は真蒼な顔をして居りました」
「娘はそれっきり来ねえのだね」
「春になっては一度も参りません。去年の暮れに顔を見せましたのが一生の別れでございます」


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