岡本綺堂 『半七捕物帳』 「親方の御料簡はよく判っています」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「親方の考えはよくわかります」
「でも世の中はうるさくて、今回の一件でもいろいろ噂を立てる奴がいるんですよ」
「何を言ってるんですか?」
「実は……。あなた方の前では言いづらいことですが……」
「誰かが船底に細工をして……」
「やっぱりそんなことを言ってますか?」
「奥方を沈めようとした……」
「そんなことを言っちゃあなんですが……。どこの屋敷でも、奥方とお嬢様は仲が悪いものだそうです……」
「おい、おい。とんでもない」
「それじゃ奥方が何か仕掛けて、うちの娘を沈めたって言うんですか。それは違います、大違いですよ。屋敷の奥方に限って絶対に、そんなことをなさるような方じゃありません。奥方はまことに立派な方で、それは私が保証します。一体あなた方はそんなことを誰から聞いたんですか?」
「いや、奥方に限ったわけじゃありませんが、屋敷には大勢の男もいる、女もいる。その大勢のうちには当然こちらのお嬢さんと仲の悪い奴もいるでしょう。何かのことでお嬢さんを恨んでる奴もいるかもしれないから……」
「そりゃあ恨まれてるかもしれませんけど……」
「世の中には筋違いの恨みって言って、自分の悪いことを無視して、人を恨む奴もいますからね。何かそんな心当たりがありますか?」

原文 (会話文抽出)

「親方の御料簡はよく判っています」
「しかし世間の口はうるさいもので、今度の一件に就いてもいろいろの噂を立てる者がありますよ」
「どんなことを云って居ります」
「実は……。お前さん達の前じゃあ云いにくい事ですが……」
「誰かが船底へ細工をして……」
「やっぱりそんなことを云って居りますか」
「お部屋さまを沈めようとした……」
「そんなことを云っちゃあなんですが……。どこのお屋敷でも、奥さまとお部屋さまとは折り合いのよくないもので……」
「あれ、お前さん。飛んでもない」
「それじゃあ奥さまが何か細工をして、内の娘を沈めたとでも云うのですかえ。そりゃあ違います、大違いです。お屋敷の奥さまに限って決して決して、そんな事をなさるような方じゃありません。奥さまはまことに結構なお方で、それはわたしが請け合います。一体お前さんはそんなことを誰に聞いたのです」
「いや、奥さまに限ったわけじゃあありませんが、お屋敷には大勢の男もいる、女もいる。その大勢のうちには自然こちらの娘さんと仲の悪い者も無いとは云えません。何かのことで娘さんを恨んでいる者も無いとは限りませんから……」
「そりゃあ恨まれているかも知れませんが……」
「世の中には外道の逆恨みと云って、自分の悪いのを棚にあげて、人を恨む者もありますからね。何かそんな心あたりでもありますかえ」


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