岡本綺堂 『半七捕物帳』 「はは、馬鹿な奴め。自分で陥し穽を掘ってい…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「はは、あほなやつだ。自分で落とし穴掘って抜け出せなくなる」
「どうも変な天気だ。この春は雨が降らないから悪い」
「いつもお邪魔してすみません。実は親分さんに聞いておいていただきたいことがあって……」
「また何か事件ですか?」
「乳母のお福が昨日から帰ってきません。夕方から姿を消して、どこに行ったのかわかりません……」
「今まで家を出たことはありますか?」
「いえ、7年間一度も夜泊まりをしたことはありません。時が時なので、主人も心配しています。もしや申し訳なくて自殺したんじゃないかと……。お福1人じゃなく、若い奥さんや近所の人たちも一緒だったので、たとえ子供が消えたとしても、自分だけの責任じゃないんですけど、本人はすごく気に病んで、昨日はまともにご飯も食べられない様子でした。もしや思い詰めて何か間違ったことを……。実は若い奥さんもちょっと取り乱してて、お福に何かあったら、お福1人じゃ殺さないで、自分も責任を取って一緒に死ぬって言ってるんです。それで、ますます心配が大きくなって……。親分さん、どうか助けてください」
「お気持ちはよくわかります。ところで、私の調べたところでは、お福の元旦那は次郎吉という男で、今は浅草のお寺の裏手で暮らしてるそうですが、お福がそこを訪ねることはありませんでしたか?」

原文 (会話文抽出)

「はは、馬鹿な奴め。自分で陥し穽を掘っていやあがる」
「どうも悪い陽気だ。この春は雨が降らねえからいけねえ」
「毎度お邪魔をいたして相済みませんが、実は親分さんのお耳に入れて置きたい事がございまして……」
「なにか又、出来しましたかえ」
「乳母のお福がゆうべから戻りません。日暮れから姿が見えなくなりまして、どこへ行ったか判りませんので……」
「これまでに家を明けたことはありますかえ」
「いえ、あしかけ七年のあいだに、唯の一度も夜泊まりなどを致したことはございません。時が時でございますから、主人も心配いたしまして、もしや申し訳が無いなどと短気を起こしたのではあるまいかと……。お福ひとりではなく、若いおかみさんや近所の人達も一緒にいたのですから、たとい子供が見えなくなりましても、自分ばかりの落度というのでも無いのですが、当人はひどく苦に病んで、きのうは碌々に飯も食わないような始末でしたから、もしや思い詰めて何かの間違いでも……。実は若いおかみさんも少し取りのぼせたような気味で、お福に万一の事があれば、お福ひとりは殺さない、自分も申し訳のために一緒に死ぬなどと申して居りますので、いよいよ心配が重なりまして……。何分お察しを願います」
「まったくお察し申します。そこで、わたしの調べたところじゃあ、お福の先の亭主は次郎吉という男で、今は浅草の聖天下にくすぶっているのだが、お福は時々そこへたずねて行くようなことはありませんかえ」


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