岡本綺堂 『半七捕物帳』 「あの玉ちゃんという児は七つになりますかえ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「あの玉ちゃんって子は7歳ですか。俺も店の前で遊んでるの見たことあるけど、色白でかわいい子だったよね」
「はい、主人のお子さんを褒めるのもなんですが、おっしゃる通り、色白でかわいい子でして……」
「それだけに親御さんも心配してて、もしかして拐われたんじゃないかって言ってるんです。近所の人たちもみんなそう思ってて、これは早く三河町の親分さんに相談したほうがいいってことで、こんな夜中にすみません」
「それで、俺の覚え書きのために、知ってること全部正直に話して下さい」
「お店には旦那さんと奥さんがいるんですよね」
「はい、旦那さんは半右衛門で53歳。奥さんはおとせで50歳です」
「若旦那夫婦は……」
「若旦那は金兵衛で30歳。若い奥さんはお雛で26歳。若い奥さんの実家は、岩井町の田原っていう材木屋です」
「乳母さんは」
「お福って言って、若い奥さんと同い年です。お福の実家は根岸の魚八って魚屋で、お父さんは代々の八兵衛、お母さんはお政、あと佐吉っていう弟がいます」
「乳母になるんだから、一度は結婚したと思うけど、その旦那さんとは死別ですか?」
「なんでも浅草に嫁いだんですけど、その旦那さんが遊び人で……。生まれた子が死んじゃったのをきっかけに、離婚したみたいで、乳母奉公に出たんですって。でも、本当にいい人で、主人の子供を大事にしてくれるから、評判もいいんです」
「とにかく心配ですね。これがお店と関係のある人の仕業なら、すぐに見つかるかもしれないけど、通りすがりのいたずらで、可愛いと思って連れ去ったなら、捜索は大変になる。でも、せっかく頼まれたんだから、できるだけのことはしてみますよ。旦那さんにもよろしく伝えて下さい」
「お願いいたします」

原文 (会話文抽出)

「あの玉ちゃんという児は七つになりますかえ。わたしも店の前に遊んでいるのを見たことがある。色白の綺麗な坊やでしたね」
「はい、主人の子を褒めるのもいかがですが、仰しゃる通り、色白の可愛らしい子供でございまして……」
「それだけに親たちも心配いたしまして、もしや拐引にでも逢ったのじゃあないかと申して居ります。御近所の人たちもみんな同じような考えで、これは早く三河町の親分さんにお願い申した方がよかろうと申しますので、こんな夜更けにお邪魔に出まして相済みません」
「そこで、わたしの心得のために、訊くだけのことを正直に話してください」
「お店には大旦那夫婦がありましたね」
「はい、大主人は半右衛門、五十三歳。おかみさんはおとせ、五十歳でございます」
「若主人夫婦は……」
「若主人は金兵衛、三十歳。若いおかみさんはお雛、二十六歳。若いおかみさんの里は、岩井町の田原という材木屋でございます」
「お乳母さんは」
「お福と申しまして、若いおかみさんと同い年でございます。お福の宿は根岸の魚八という魚屋で、おやじは代々の八兵衛、おふくろはお政、ほかに佐吉という弟がございます」
「乳母に出るのだから、一旦は亭主を持ったのだろうが、その亭主とは死に別れですかえ」
「なんでも浅草の方へ縁付きましたのですが、その亭主が道楽者で……。生まれた子が死んだのを幸いに、縁切りということに致しまして、乳母奉公に出たのだそうでございますが、まことに実体な忠義者で、主人の子どもを大切に致してくれますので、内外の評判も宜しゅうございます」
「なにしろ御心配ですね。これがお店にかかり合いのある者の仕業なら、案外に手っ取り早く埓が明くかも知れませんが、通りがかりの出来ごころで、ああ綺麗な児だと思って引っ攫って行かれたのじゃあ、その詮議がちっと面倒になる。しかしまあ折角のお頼みですから、なんとか出来るだけの事をしてみましょう。御主人にもよろしく仰しゃって下さい」
「なにぶん宜しく願います」


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