岡本綺堂 『半七捕物帳』 「おや、兄さん。相変らずお暑うござんすね」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「おや、兄さん。相変わらず暑苦しいですね」
「お母さんは……」
「近所の人と一緒に太郎様へ……」
「むむ、太郎様か。この頃はやたら流行ってるんだってね。俺もこの間行ってみたらびっくりしたよ。まるで祭りのような賑わいだ」
「私もこの間お参りに行っておどろきました。神様も流行するとなると大変なもんですね」
「ところでこんな物を加賀様の手古人に貰ったから、お母さんに渡してくんねえか」
「ああ、墨形落雁。これは加賀様のお国の名物だってね。うちでも一度貰ったことがありました。母さんは歯がいいから、こんな固いものでも平気でかじるんですよ」
「兄さん。この頃はお忙しいんですか?」
「むむ、たいして難しい御用もないけど、広徳寺前にちょっとしたことがあるから、これからそっちへ行って見ようかと思ってる」
「広徳寺前……。舐め筆の娘のことじゃないの?」
「お前知ってるのか?」
「あの娘は姉妹とも三味線堀のそばにいる文字春さんって人のところへお稽古に行ってたんです。妹はまだ行ってるかもしれません。その姉さんの方が急死したっていうんで、私もびっくりしました。毒を飲んだというのは本当ですか?」
「そうだ。でも自分で飲んだのか、人に飲まされたのか、そこがまだ俺にははっきり分かってねえ。お前、その文字春って師匠を知ってるなら、そこへ行って妹のことを少し聞いてきてくれねえか。妹はどんな女だか、何か愛人でもいるらしい様子はねえか、東山堂の親たちはどんな人間か、そんなことを分かるだけ調べてきてくれ」
「分かりました。お昼過ぎに行って聞いてきましょう」
「如才もあるめえが、半七の妹だ。うまくやってくれ」
「ははははは。私は商売違いですもの」
「そこを頼むんだ。うまく行ったら鰻ぐらい買うよ」

原文 (会話文抽出)

「おや、兄さん。相変らずお暑うござんすね」
「おふくろは……」
「御近所のかたと一緒に太郎様へ……」
「むむ、太郎様か。この頃は滅法界にはやり出したもんだ。おれもこのあいだ行って見てびっくりしたよ。まるで御開帳のような騒ぎだ」
「あたしもこのあいだ御参詣に行っておどろきました。神様もはやるとなると大変なもんですね」
「時にこんな物を加賀様のお手古の人に貰ったから、おふくろにやってくんねえ」
「ああ、墨形落雁。これは加賀様のお国の名物ですってね。家でも一度貰ったことがありました。阿母さんは歯がいいから、こんな固いものでも平気でかじるんですよ」
「兄さん。この頃は忙がしいんですか」
「むむ、たいしてむずかしい御用もねえが、広徳寺前にちょっとしたことがあるから、これからそっちへ行って見ようかと思っている」
「広徳寺前……。舐め筆の娘じゃないの」
「おまえ知っているのか」
「あの娘は姉妹とも三味線堀のそばにいる文字春さんという人のところへお稽古に行っていたんです。妹はまだ行っているかも知れません。その姉さんの方が頓死したというんで、あたしもびっくりしました。毒を飲んだというのはほんとうですか」
「そりゃあほんとうだが、自分で飲んだのか、人に飲まされたのか、そこのところがまだはっきりとおれの腑に落ちねえ。おまえ、その文字春という師匠を識っているなら、そこへ行って妹のことを少し訊いて来てくれねえか。妹はどんな女だか、なにか情夫でもあるらしい様子はねえか、東山堂の親達はどんな人間か、そんなことを判るだけ調べて来てくれ」
「よござんす。お午過ぎに行って訊いて来ましょう」
「如才もあるめえが、半七の妹だ。うまくやってくれ」
「ほほほほほ。あたしは商売違いですもの」
「そこを頼むんだ。うまく行ったら鰻ぐらい買うよ」


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