岡本綺堂 『半七捕物帳』 「して、それがどうかしたのか」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「で、それで何か問題が?」
「子分の幸次郎に調べさせたところ、お園の旦那は箕輪のお侍さんだと分かりました。お園は2人組の強盗に髪を切られたんです」
「髪を切られた……」
「箕輪氏の囲い者と分かっての仕業かな?」
「そうだと思います」
「その髪切りは歩兵の件と何か関係があるのでしょうか?」
「関係があると思われます。大隊長の髪を切るわけにはいかないので、愛人の髪を切ったらしいです。油断していると、この屯所の中でもまだ切られる人がいるかもしれません」
「ということは髪切りは……。屯所内の者の仕業だな」
「鮎川丈次郎と増田太平の2人だと思います」
「鮎川と増田……。確かな証拠はあるのか?」
「昨日の昼過ぎに、向島の水戸藩邸前の堤下で、怪しい男を捕まえました」
「坊主上がりで、懐に20両ほどのお金を持っていました。抵抗したのを押さえ込んで、色々調べたところ、深川海辺河岸の万華寺の納所上がりで、良住という者でした。ご存じの通り、万華寺の住職は鮎川丈次郎の親戚です。良住は身持ちが悪いので寺を追い出され、今では居場所も定まらずぶらついてますが、万華寺にいた縁から鮎川とも知り合いなんです。まだ話してませんでしたが、同じ24日の夜に、下谷金杉の高崎屋という質屋にも2人組の強盗が入りました。その1人は髪を切っていたそうですが、この良住は還俗するつもりなのか、丸刈りを長く伸ばしていて、髷を切ったようにも見えます。しかも、懐に身分不相応の大金を持っているので、こいつが下谷の強盗じゃないかとにらんで、厳しく取り調べたところ見事に当たりました」
「もう1人の仲間は誰だ。鮎川か?」
「いえ、これもあなたが知らない人物で……。湯島天神の藤屋という小料理屋で女中奉公してるお房という女の兄の米吉というやくざ者です」
「では、この2人は屯所とは無関係だな」

原文 (会話文抽出)

「して、それがどうかしたのか」
「子分の幸次郎に調べさせましたら、お園の旦那は箕輪の殿様だということがわかりました。お園は二人組の押込みに髪を切られたのでございます。」
「髪を切られた……」
「箕輪氏の囲い者と知っての業かな」
「そうだろうと思います」
「その髪切りは歩兵の一件と何か係り合いがあるのだろうか」
「係り合いがあるように思われます。まさか大隊長の髪を切るわけにも行かないので、お妾さんの髪を切ったらしいのでございます。油断をしていると、この屯所の中でもまだまだ切られる者があるかも知れません」
「では髪切りは……。屯所内の者の仕業だな」
「鮎川丈次郎、増田太平の二人だろうと思います」
「鮎川と増田……。確かな証拠があるかな」
「きのうの午過ぎに、向島の水戸さま前の堤下で、怪しい者を召し捕りました」
「坊主あがりで、懐中には二十両ほどの金を所持して居りました。手向かいするのをおさえて、だんだん詮議いたしますと、深川海辺河岸の万華寺の納所あがりで、良住という者でございました。御承知の通り、万華寺の住職は鮎川丈次郎の親類でございます。良住は身持ちが悪いので寺を逐い出され、今では居どころも定めずごろ付いて居りますが、万華寺にいた縁故から鮎川とも知合いでございます。まだお話を致しませんでしたが、同じ二十四日の晩に、下谷金杉の高崎屋という質屋へも二人組の押込みがはいりました。その一人は髪を切っていたと云うことでしたが、この良住は還俗するつもりとみえて、いが栗頭を長く伸ばしていて、髷を切ったような形にも見えます。その上、懐中には身分不相当の大金を持っているので、こいつが下谷の押込みではないかと睨みまして、きびしく吟味すると案の通りでございました」
「もう一人の同類は誰だ。鮎川か」
「いえ、これもあなたが御存知のない者で……。湯島天神の藤屋という小料理屋に女中奉公をしているお房という女がございます。その兄の米吉というならず者でございます」
「では、この二人は屯所に関係はないな」
「左様でございます」


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