岡本綺堂 『半七捕物帳』 「ひどい風、ひどい砂、眼を明いちゃあ歩かれ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「ひどい風と砂で、目が開けられないです」
「やあ、お疲れさん。すごい風だな」
「ご依頼の件、調べてきました。藤屋のかみさんに聞いたところ、お房さんの言ったことは少し嘘が混じってます。確かに正月には歩兵4人が来て、お金を借りていったそうですが、その勘定はもう済んでるそうです。やっぱりお房さんは鮎川っていう歩兵と関係があって、名目をつけて屯所へ呼び出してるみたいですね。そこをあなたが目撃したから、いい加減なことを言ってごまかしたんです。お房さんは今年20歳で、兄貴の米吉っていうのはやくざで、大名屋敷や旗本屋敷の大部屋に出入りして過ごしてる。もちろん、妹のところにも無心に来て、よくある厄介兄貴らしいです」
「お房さんの恋人の鮎川ってどんなやつだ?」
「江戸っ子じゃないんですよ。武蔵の大宮の百姓の息子で、実家はまあまあ裕福だそう。本人は江戸に出て若党奉公をしたいと思ってたら、江戸で歩兵を募集するって話になって、すぐに応募して、三番隊の第二小隊に入ったんです。23歳で、色白のおとなしい男で、茶袋の中では花形だって評判です」
「江戸に親戚はいないのか?」
「そこは分かりませんが……」
「そっちは亀の担当だから、なんとか分かるだろ。今日はとりあえずこれで帰って、また明日早く来てくれ」

原文 (会話文抽出)

「ひどい風、ひどい砂、眼を明いちゃあ歩かれません」
「やあ、御苦労。ひどい風だな」
「御注文の一件は調べて来ました。藤屋のかみさんに訊いてみると、お房の云ったことは少し嘘がまじっています。成程この正月には歩兵の四人連れが来て、借りて行ったには相違ねえが、その勘定はもう済んでいるそうです。お房はやっぱり鮎川という歩兵と訳があって、なんとか彼とか名をつけて、屯所へ呼び出しに行くらしい。そこをお前さんに見付けられたので、いい加減のことを云って誤魔化したのです。お房はことし二十歳ですが、その兄貴の米吉というのは商売無しの遊び人で、大名屋敷や旗本屋敷の大部屋へはいり込んで日を暮らしている。勿論、妹のところへも無心に来る。お定まりの厄介兄貴だそうです」
「お房の相手の鮎川というのは、どんな奴だ」
「こりゃあ江戸者じゃあありません。武州大宮在の百姓の舎で、実家もまあ相当にやっている。本人は江戸へ出て若党奉公でもしたいと望んでいるところへ、江戸で歩兵を募集する事になったので、早速に願い出て、三番隊の第二小隊にはいることになったそうです。年は二十三で、色の白い、おとなしやかな男で、茶袋の仲間じゃあ花形だという評判です」
「江戸に親類はねえのか」
「さあ、そこまでは判りませんが……」
「そりゃあ亀の方の受持ちだから、なんとか判るだろう。今夜はまあこれで帰って、あした又早く来てくれ」


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