GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「いい話……。金が降ったのか?」
「冗談言わないで。実は昨日、浅草の代地河岸のお園っていう女の家が強盗に入られて、母親と女中の持ち物はスルーして、お園の着物を全部持って行っちゃったんです。それだけなら珍しくもないけど、逃げる時に髪を根元からスパッと切って、持って行ったらしいです」
「お園って誰だ?」
「前は深川で芸者をしてたのを、旦那さんに養われて、おふくろと女中の3人で暮らしてるんです。23歳で、ちょっと派手めな女です。商売上がりの女だから、昔の男関係で髪を切られるのは有り得るけど、それにしては着物を全部持って行くのはやりすぎ。かといって、ただの強盗なら髪まで持ってく必要はない。で、強盗は2人組だったみたいです」
「嫌な流行りだな」
「屯所の事件が話題になってるから、その真似をしたのか、それとも何か裏があるのか、どっちでしょうね」
「お園の旦那って誰?」
「秘密にしてるみたいで分からないんですが、とにかく町人じゃないみたいです。近所の噂だと、旗本の殿様か、大名屋敷の留守居とか、そんな人らしいですよ……」
「旦那は役人か」
「着物は仕方ないんですけど、髪を切られたら旦那に申し訳ないって、お園は半狂乱で泣いて騒いで、代地から飛び込みそうになったのを、おふくろと女中が泣いて止めたんです。近所の人も助けたみたいで。もう大騒ぎだったそうです」
「旦那が役人なら、この髪切りも単なる真似じゃ済まなくなるな。その旦那が何者なのか、なんとか突き止められないか?」
「それは簡単ですよ。おふくろか女中にそれとなく聞いても分かるはずです。旦那さんは近所の小岩っていう駕籠屋から乗って帰ることもあるそうなので、駕籠屋に聞いても、屋敷の見当はつくと思います。すぐに調べてきます」
「その旦那が歩兵隊と関係ある奴なら、この事件がまた面白くなるな」
原文 (会話文抽出)
「親分。早速ですが、いい話を聴いて来ました」
「いい話……。金でも降ったというのか」
「まぜっ返しちゃあいけねえ。実はゆうべ、浅草の代地河岸のお園という女の家へ押込みがはいって、おふくろと女中の物には眼もくれず、お園の着物をいっさい担ぎ出してしまいました。それだけなら珍らしくもねえが、出ぎわにお園の髷を根元からふっつりと切って、持って行ったそうです」
「お園というのは何者だ」
「以前は深川で芸者をしていたのを、ある旦那に引かされて、おふくろと女中の三人暮らしで、代地に囲われているのです。年は二十三で、ちょいと蹈める女です。商売あがりの女だから、昔の色のいきさつで髷を切られる位のことはありそうですが、それにしちゃあ着物をみんな担ぎ出すのは暴っぽい。といって、唯の押込みなら髷まで持って行くにゃあ及ぶめえ。その押込みは二人連れだと云うことです」
「悪いはやり物だな」
「屯所の一件が評判になっているので、何が無しに髪切りの真似をしてみたのか、それとも何か仔細があるのか、どっちでしょうね」
「お園の旦那は誰だ」
「内証にしているので判らねえが、なにしろ町人じゃあありません。近所の噂じゃあ、旗本の殿さまか、大名屋敷の留守居か、そんな人らしいと云うのですが……」
「旦那は屋敷者か」
「着物なんぞを取られたのは仕方もないが、髷を切られちゃあ旦那に申し訳がないと云って、お園は半気ちがいのように泣いて騒いで、あぶなく代地の河岸から飛び込みそうになったのを、おふくろと女中が泣いて留める。近所の者も留めに出る。いや、もう、大騒ぎだったそうですよ」
「旦那が屋敷者となると、この髪切りも人真似とばかり云っていられねえ。その旦那は何者だか、突き留める工夫はねえか」
「そりゃあ訳はありません。おふくろや女中にカマを掛けて訊いても判ります。その旦那は近所の小岩という駕籠屋から乗って帰ることもあるそうですから、駕籠屋に訊いても、屋敷の見当は大抵付くというものです。すぐに調べて来ましょう」
「その旦那が歩兵隊に係り合いのある人間なら、この一件が又おもしろくなって来るからな」