岡本綺堂 『半七捕物帳』 「おい、徳寿さん、どうしたい」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「おい、徳寿さん、どうしてるんだ」
「いいお天気になって結構でございます。旦那さん、今日はどちらへ……」
「ちょうどいいところに会った。お前もこの近所らしいが、ここらにおきんって辻おみくじを売ってる家はねえかな」
「ええ。おきんは私の近所にいましたが、昨年の暮れからどこかに引っ越してしまいましたよ」
「本人がいなくても、親か兄弟がいるだろう。一人暮らしじゃないだろう」
「それが旦那さん。こういう事情なんです」
「おきんは兄貴と二人で暮らしていたんですが、その兄貴の寅松っていうのは博奕打ちの道楽者でしてね。おきんの行方が分からなくなると、それから半月くらい経って、これもどこかに夜逃げのように姿を隠してしまいました。なんでも博奕場で喧嘩をして、人に傷をつけたとかいうので、それが面倒になってどこかに飛んで行ってしまったらしいんです。そういうわけですから、家ははもう空き家になってしまって、2、3日中に他の人が越して来るとかいう噂でございます」
「あの辰伊勢の寮にいる誰袖って女も、やっぱり金杉の近所の者だというじゃないか。お前、知らないか」
「知ってます。誰袖さんのお姉さんも金杉の生まれで、やっぱりおきんの近所で育ったそうですが、両親ともにもう亡くなってしまって、これも跡継ぎはいませんよ」

原文 (会話文抽出)

「おい、徳寿さん、どうしたい」
「よいお天気になりまして結構でございます。旦那様、今日はどちらへ……」
「丁度いい所でおまえに逢った。お前もこの近所だそうだが、ここらにおきんという辻占売りの家はねえかしら」
「へえ。おきんはわたくしの近所におりましたが、昨年の暮から何処へか行ってしまいましたよ」
「本人はいなくっても、親か兄妹があるだろう。ひとり者じゃあるめえ」
「それが旦那。こういう訳なんでございますよ」
「おきんは兄貴と二人で暮していたんですが、その兄貴の寅松というのは博奕打ちの道楽者でしてね。おきんのゆくえが知れなくなると、それから半月ばかり経って、これも何処へか夜逃げのように姿を隠してしまいました。なんでも博奕場で喧嘩をして、人に傷をつけたとかいうので、それが面倒になって何処へか飛んで行ってしまったらしいんです。そういうわけですから、家はもう空店になってしまって、二、三日中にほかの人が越して来るとかいう噂でございます」
「あの辰伊勢の寮にいる誰袖という女も、やっぱり金杉の近所の者だというじゃあねえか。お前、知らねえか」
「存じて居ります。誰袖さんの花魁も金杉の生まれで、やっぱりおきんの近所で育ったんだそうですが、両親ともにもう死に絶えてしまいまして、これも跡方はございませんよ」


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