岡本綺堂 『半七捕物帳』 「徳寿さん。おまえが今あすこで立ち話をして…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「徳寿さん。お前に今あそこで立ち話をしていたのはどこの寮だ」
「旦那さんはあそこにいらっしゃったんですか。全く知りませんでした。はははは。いえ、あそこは遊郭の辰伊勢っていう家の寮ですよ」
「向こうが何度も呼び込もうとしてたけど、お前は必死に逃げ回ってたじゃないか。遊郭の寮ならいいお客さんのはずなのに」
「でも、旦那。あそこはなんか具合が悪いんですよね。別に代をくれないとかそういうことじゃないんですけど、なんかこう、気味悪い家なんですよ」
「気味悪い家……。それはどういうことなんだ。まさか化け物が出るわけでもあるまいし」
「ええ、そんな噂はないんですけど、私としてはどうにも気持ちが悪いんです……。あそこで呼ばれると何だかぞっとしちゃって、逃げるように断わってきてるんですよ」
「変な話だな」
「どこがどう気味悪いのかね。分からないな」
「私にも分かりません。ただなんだか襟元から水をかけられたみたいに、体がぞっとするんです。目が見えないから何も分かりませんけど、なんかこう、変なものがそばに座ってるような感じがして……。本当に変ですよ」
「そもそもあの寮には誰が来てるんだ」
「誰袖さんって花魁さんです。20歳そこそこの働き盛りで、すごい美人らしいんですけど、去年の11月頃から用事を作って、あの寮に養生に来てるんですよ」
「暮れから春にかけて店を休んでるってことは、よっぽど悪いんだろうね」

原文 (会話文抽出)

「徳寿さん。おまえが今あすこで立ち話をしていたのは何処の寮だえ」
「旦那はあの辺においでなさいましたか。ちっとも存じませんで。はははは。いえ、あすこは廓の辰伊勢という家の寮でございますよ」
「先方じゃあ頻りに呼び込もうとするのを、おまえは無暗に逃げていたじゃあねえか。廓の寮ならば好いお得意様だ」
「ところが、旦那。どうもあすこは工合が悪いんでしてね。いえ、別に代をくれないの何のという訳じゃないんですが、なんですかこう、気味の悪いような家でしてね」
「気味の悪い家……。そりゃあどういうんだね。まさかに化けものが出る訳でもあるめえ」
「へえ、別にそんな噂もないんですが、わたくしはどうも気味が悪うございまして……。あすこで呼ばれると何だがぞっとして、逃げるように断わって来るんですよ」
「変な話だね」
「どういうわけで気味が悪いんだろう。判らねえな」
「わたくしにも判りません。ただ何となしに襟もとから水を浴びせられたように、からだ中がぞっとするんです。眼が見えませんからなんにも判りませんけれど、なにかこう、おかしなものが傍にでも坐っているような工合で……。まったく変でございますよ」
「一体あの寮には誰が来ているんだね」
「誰袖さんという花魁でございます。二十一二の勤め盛りで、凄いような美い女だそうでございますが、去年の霜月頃から用事をつけて、あの寮へ出養生に来ているんでございますよ」
「暮から春へかけて店を引いているようじゃあ、よっぽど悪いんだろうね」


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