岡本綺堂 『半七捕物帳』 「じゃあ兄弟二人ぎりか。兄貴はおめえを可愛…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「じゃあ兄弟2人だけか。兄貴はお前を可愛がってくれるか」
「ふーん。野宿するときには何日も閻魔様まで一緒に来て、兄貴がいろんな物を食べさせてくれる」
「それはいい兄貴だな。お前は幸せだ」
「その兄貴をおれが今、捕まえてしまったらどうする」
「おじさん、勘弁してください」
「悪いことをすれば捕まるのは当たり前だ」
「おれは悪いことをしてないのに捕まった。だから腹が立ったんだ」
「腹が立ったからどうした。ええ、隠すな。正直に言え。おれは十手を持ってるんだぞ。お前は腹いせに、兄貴に何か頼んだんだろう。さあ、白状しろ」
「頼んではいないけど、兄貴もすごくひどいって腹を立てて……。何もしていないのにむやみにあんな目に遭わせるなんて酷いって言った」
「それはお前の日頃の行いが悪いからだ。今だって柿を盗もうとしたじゃないか」
「子供だからそんなのは仕方ない。叱ってくれれば済むことだ。親方に殴られるのは我慢するけど、寺の小役人たちがむやみに棒で殴ったり、縛ったりするのは酷い。人を縛るってのは重いことで、むやみにできるもんじゃないって兄貴が言った」
「おれはこうなったら何もかも言ってしまうが、兄貴があまりに腹を立てたもんだから、おれの応援で仕返ししてくれたんだ。おれが垣根を登ったって密告したのは煙草屋の娘だ。おれを殴って縛ったのは寺の小役人のぼけた爺さんだ。この連中全員にひどい目に遭わせてやろうと、兄貴はずっと狙ってたんだ」
「すると、煙草屋の娘と寺の小役人の佐兵衛と番太の痴漢と、この3人にいたずらしたのはお前の兄貴だな」
「おじさん、勘弁してください」
「兄貴が悪いんじゃない。兄貴はおれの応援をしてくれたんだ。兄貴を捕まえるならおれを捕まえてくれ。兄貴は今までおれを可愛がってくれたんだから、おれが兄貴の代わりに捕まっても構わない。お願い、おじさん。兄貴を許して、おれを捕まえてくれよ」

原文 (会話文抽出)

「じゃあ兄弟二人ぎりか。兄貴はおめえを可愛がってくれるか」
「むむ。宿下がりの時にゃあ何日でもお閻魔さまへ一緒に行って、兄貴がいろんなものを食わしてくれる」
「そりゃあ好い兄貴だな。おめえは仕合わせだ」
「その兄貴をおれが今、ふん縛ったらどうする」
「おじさん、堪忍しておくれよう」
「悪いことをすりゃあ縛られるのはあたりめえだ」
「おいらは悪いことをしねえでも縛られた。それであんまり口惜しいから」
「口惜しいからどうした。ええ、隠すな。正直にいえ。おらあ十手を持っているんだぞ。てめえは口惜しまぎれに、兄貴になんか頼んだろう。さあ、白状しろ」
「頼みゃあしねえけれども、兄貴もあんまりひどいって口惜しがって……。なんにもしねえものを無暗にそんな目にあわせる法はねえと云った」
「そりゃあ手前のふだんの行状が悪いからだ。現にてめえは柿を盗もうとしたじゃねえか」
「そのくらいは子供だから仕方がねえ。叱って置いても済むことだ。それも親方に撲られるのは我慢するけれども、自身番の奴らがむやみに棒で撲ったり、縛ったりしやあがった。ひとを縛るということは重いことで、無暗に出来るもんじゃあねえと兄貴が云った」
「おいらはもうこうなりゃあ何もかも云っちまうが、兄貴があんまり口惜しいというんで、おいらの加勢で意趣返しをしてくれたんだ。おいらが垣根を登ったなんて密告をした奴は煙草屋のおちゃっぴいだ。おいらをぶん撲って縛った奴は自身番の耄碌おやじだ。こいつ等をみんなひどい目にあわしてやると、兄貴は終始狙っていたんだ」
「すると、煙草屋のむすめと自身番の佐兵衛と番太の嚊と、この三人にいたずらした奴は手前の兄貴だな」
「おじさん、堪忍しておくれよう」
「兄貴が悪いんじゃあねえ。兄貴はおいらの加勢をしてくれたんだ。兄貴を縛るならおいらを縛ってくんねえ。兄貴は今までおいらを可愛がってくれたんだから、おいらが兄貴の代りに縛られても構わねえ。よう、おじさん。兄貴を堪忍してやって、おいらを縛ってくんねえよ」


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