岡本綺堂 『半七捕物帳』 「燈台下暗しで、やっぱり佐藤の屋敷に忍んで…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「灯台下暗しで、やっぱり佐藤の屋敷に潜んでるかもしれねぇ」
「親分、出かけるんですか?」
「おう。今夜はおれが音羽に行って、張り込もうと思う」
「それじゃよかった。実はまた事件が起きて」
「黒沼の家の娘が死んだって?」
「養子縁組した娘だよ」
「そうです。お勝って言って、今年18です。父親が死んで、幸之助を婿養子にしたんですけど、お勝が病気で寝込んでたんで、結婚式も延期になってたら、幸之助が家出して帰らなくなって。それで、お勝が自害したそうです」
「自害したのか」
「刀か懐剣か知りませんけど、とにかく寝床から起き上がって、首を突いたんだそうです」
「あと、変なのがあって、黒沼の隣の瓜生っていう家では、お北っていう娘が行方不明になったそうです」
「幸之助が行方不明になる。嫁になる予定だったお勝っていう女が自害する。隣りの娘が行方不明になる。どんどんややこしくなるな。それで、その女たちは、なんで自害したのか、なんで行方不明になったのか。理由がわかんないのか?」
「武家の屋敷の中で起きた騒動だから、詳しいことは全然わかりません。ここまで探り出すだけでも大変でしたよ」
「そうだろうなぁ」
「そう聞くと余計に放っとけない。面倒だけど、もう一度行ってくれ」

原文 (会話文抽出)

「燈台下暗しで、やっぱり佐藤の屋敷に忍んでいるかも知れねえ」
「親分、出かけるんですかえ」
「むむ。今夜はおれが音羽へ出かけて、張り込んでみようと思うのだ」
「それじゃあ行き違いにならねえで好かった。実は又ひとつ事件が出来してね」
「黒沼の家の娘が死んだそうで……」
「家付き娘だな」
「そうです。お勝といって、ことし十八になります。親父が死んで、幸之助を急養子にしたんですが、お勝は病気で寝ているので、祝言も延びのびになっているうちに、幸之助は家出をして帰らない。それがもとで、お勝は自害したそうです」
「自害したのか」
「短刀だか懐剣だか知らねえが、なにしろ寝床の上に起き直って、喉を突いたんだと云うことです」
「それからまだおかしいことは、黒沼のとなりの瓜生という家では、お北という娘が家出をしたそうです」
「幸之助が家出をする。女房になる筈のお勝という女が自害する。又その隣りの娘が家出をする。それからそれへと悪くごたつくな。それで、その女たちは、なぜ自害したのか、なぜ家出をしたのか。その訳はわからねえのか」
「なにぶん武家の組屋敷のなかで出来た騒動だから、くわしい事はとても判らねえ。これだけのことを探り出すのでも容易じゃあありませんでしたよ」
「そうだろうな」
「そう聞いちゃあ猶さら打っちゃっては置かれねえ。御苦労だが、もう一度行ってくれ」


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