GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「本所ってどこだ。吉良の屋敷じゃあるまい」
「冗談言わないでください。相生町の2丁目の魚屋です」
「相生町の魚屋……。徳蔵か」
「よくご存知ですね」
「夢でも見たのかな?」
「いや。昨日浅草のお祭りに行って、よく祈願したから、三社様が夢枕に立ってお告げがあったんだ。犯人はまだ分かってないみたい。奥さんはどうしてる」
「奥さんは無事で。昨夜、弟の葬式を出して、家族全員ががっかりして寝込んでる所にやって来て、お供え物を盗もうとした奴を、徳蔵が目覚まして捕まえようとしたんです。そしたらその奴が店の鰺切りで徳蔵の額と胸を刺して逃げたそうです。奥さんが泣き叫んで近所の人に助けを求めたんですが、もう間に合いません。相手は逃げる、徳蔵は死ぬという騒ぎで、とりあえず親分の耳に入れておこうと思って」
「そうか。もう検視は終わっただろうな。で、犯人の見当はあるのか?」
「どうも分からないようです」
「奥さんが取り乱して、気が狂ったように泣いているだけみたいで、何がなんだか全く分からないようです」
「泣くのは上手だろうよ。女郎上がりだから」
「ところで善八。お前はこれから鳥越に行って、煙草屋の伝介はどうしているか、様子を見てこい」
「あいつに何か用ですか?」
「ただその様子を何げなく見ればいいんだ。まごついて怪しまれるなよ」
「わかりました。すぐに行ってきます」
「頼んだよ」
原文 (会話文抽出)
「親分、知っていますかえ。いや、この体たらくじゃあ、まだ知んなさるめえ。ゆうべ本所で人殺しがありました」
「本所はどこだ。吉良の屋敷じゃあるめえ」
「わるく洒落ちゃあいけねえ。相生町の二丁目の魚屋だ」
「相生町の魚屋……。徳蔵か」
「よく知っていなさるね」
「夢でも見なすったかえ」
「むむ。きのう浅草のお祭りへ行って、よく拝んで来たので、三社様が夢枕に立ってお告げがあった。下手人はまだ判らねえか。嬶はどうしている」
「かかあは無事です。きのうの夕方、弟のとむれえを出して、家じゅうががっかりして寝込んでいるところへはいって来て、あつまっている香奠を引っさらって行こうとした奴を、徳蔵が眼をさまして取っ捉まえようとすると、そいつが店にある鰺切りで徳蔵の額と胸とを突いて逃てしまったんだそうです。嬶が泣き声をあげて近所の者を呼んだんですが、もう間にあわねえ。相手は逃げる、徳蔵は死ぬという始末で大騒ぎだから、ともかくも親分の耳に入れて置こうと思ってね」
「そうか。もう検視は済んだろうな。そこで、下手人の当りはあるのか」
「どうも判らねえようです」
「なにしろ嬶はとりみだして、気ちがいのように泣いているばかりだから、何がなんだかちっとも判らねえようですよ」
「泣くのは上手だろうよ。女郎上がりだからな」
「ところで善ぱ。おめえはこれから鳥越へ行って、煙草屋の伝介はどうしているか、見て来てくれ」
「あいつを何か調べるんですかえ」
「ただその様子を何げなしに見て来りゃあいいんだ。まご付いて気取られるなよ」
「ようがす。すぐに行って来ます」
「しっかり頼むぜ」