岡本綺堂 『半七捕物帳』 「親分さん。恐れ入りました。そう仰しゃられ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「親分さん。恐れ入りました。そう言われると、私も少し思い当たることがあります」
「何か心当たりが?」
「実は去年の冬のことなんです。隠居が風邪をひいて半月ほど寝込んでたんです。その看病に手が足りないってことで、店から小僧を1人よこしてくれって言われたので、音吉をやったんですが、あいつは怠け者でダメだと1日で帰されちゃって、代わりに徳次郎をよこしたら、今度はすごく親方に気に入られて、病人が起きるまでずっと隠居所に詰めてました。その後も何か用があると、いつも徳次郎をよこせって言ってくるんですが、前のことがあったので、別に不思議にも思ってませんでした。正月の藪入りにも、親方から特別にお小遣いをもらったみたいでした。それからこの2月の初めの頃のことです。夜中に庭側の雨戸を毎晩揺する者がいるって、小女のお熊が怖がってるのと、店の方でも心配したので、親方に聞いてみると、お熊がなにか寝ぼけて、そんなことはないってはっきり否定したんで、こっちも安心してたんですけど、今思えばあれやこれやが重なって、なるほど親分さんの推測は正しかったんでしょう。本当に恐れ入りました。私達がそばにいたのに、仕事に夢中で全くそういうことに気づかず、本当に申し訳ありません。それで、親分さん。このことは主人には内々で話しておいたほうがいいですよね」
「旦那さんにはだけは話しておいた方がいいでしょう。また、後のことを考えると」
「本当にその通りです。いろいろありがとうございました」

原文 (会話文抽出)

「親分さん。恐れ入りました。そう仰しゃられると、わたくしの方にも少し思いあたることがございます」
「なにか心当りがありますかえ」
「実は去年の冬でございました。隠居が風邪をひいて半月ばかり臥せっていたことがございます。その看病に手が足りないので、店の方から小僧を一人よこしてくれと云うことでしたから、あの音吉をやりましたところが、あれは横着でいけないというので一日で帰されまして、その代りに徳次郎をやりますと、今度は大層お此さんの気に入りまして、病人の起きるまで隠居所の方に詰め切りでございました。その後もなにか隠居所の方に用があると、いつでも徳次郎をよこせと云うことでしたが、前のことがありますので別に不思議にも思っていませんでした。正月の藪入りの時にも、お此さんから別にいくらか小遣いをやったようでした。それからこの二月の初め頃でございました。夜なかに庭口の雨戸を毎晩ゆすぶる者があるといって、小女のお熊が怖がりますので、店の方でも心配してお此さんに訊いてみますと、それはお熊がなにか寝ぼけたので、そんなことはちっとも無いと堅く云い切りましたから、こちらでも安心してその儘にいたしてしまいましたが、今となってそれやこれやを思いあわせますと、なるほどお前さんの御鑑定が間違いのないところでございましょう。まったく恐れ入りました。手前どもがそばに居りながら、商売にかまけて一向その辺のことに心づきませんで、まことに面目次第もないことでございます。そこで、親分さん。このことは主人にだけは内々で話して置く方がよろしゅうございましょうね」
「旦那にだけは打ち明けて置く方がいいでしょう。又あとのこともありますからね」
「大きに左様でございます。どうもいろいろありがとうございました」


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