GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「ふむ。店でどうしたんだ」
「ご存じかどうか知りませんが、主人の店に徳次郎という小僧がいます。今年16で、近いうちに元服することになっていました。それが何だか分からない病気で、昨日亡くなりました」
「やれやれ、気の毒だな……。どんな小僧かよく覚えてないけど、15、16で死んじゃかわいそうだ。ところで、それがどうしたんですか?」
「徳次郎は半月ほど前から、急に口の中が腫れ上がって、しゃべれなくなりました。かかりつけの医者に診てもらいましたが、どんどん悪化するばかりで、仕方なく駕籠に乗せて、とりあえず宿に下ろしました。宿は本所相生町の徳蔵という魚屋で、普段からとても真面目な人です。ところが、宿に帰ってから徳次郎の容体がさらに悪化して、とうとう昨日の午後2時に息を引き取ったそうです。本当にかわいそうなことをしました。それもまあ寿命なら仕方がないんですが、本人が息を引き取る間際、もつれた舌で何か言ったそうです……」
「何を言ったんです」
「それがなんです。徳次郎が死に際に、『私は店の親方に殺されたんだ』と言ったそうです……」
原文 (会話文抽出)
「親分さん。手前はとかく口下手で困りますので……。まあ、お聴きください。手前自身のことではございませんので、実は主人の店に少々面倒なことが起りまして……」
「ふむ。お店でどうしました」
「御存じかどうか知りませんが、主人の店に徳次郎という小僧がございます。ことし十六で、近いうちに前髪を取ることになって居ります。それが何だか判らないような病気で、きのう亡くなりましたのでございます」
「やれ、やれ、可哀そうに……。どんな小僧さんだかよく覚えていないが、なにしろ十五や十六で死んじゃ気の毒だ。ところで、それがどうかしたんですかえ」
「徳次郎は半月ほど前から、急に口中が腫れふさがりまして口を利くことが出来なくなりました。出入りの医者に手当をして貰いましたが、だんだん悪くなりますばかりで、よんどころなく駕籠に乗せまして、ひとまず宿へ下げましたのでございます。宿は本所相生町の徳蔵という魚屋で、ふだんから至極実体な人間でございます。ところが、宿へ帰りましてから徳次郎の模様がいよいよ悪くなりまして、とうとうきのうの八ツ頃(午後二時)に息を引き取ったそうで、まことに可哀そうなことを致しました。それもまあ寿命なら致し方ないのでございますが、当人がいよいよ息を引き取ります時、廻らない舌で何か申しましたそうで……」
「どんなことを云ったんです」
「それがお前さん。徳次郎が死にぎわに、わたしは店のお此さんに殺されたのだと申したそうで……」