岡本綺堂 『半七捕物帳』 「おお、立派な帝釈様がある。それは幾らです…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「お、立派な帝釈天ですね。いくらですか?」
「私はその万さんって人を知ってますけど、安物買いの銭失いをして、ひどいものを押し付けられたって、よく愚痴ってましたよ。ははははは」
「だって、あなた」
「値段と中身の相談ですよ。中はいいか悪いか知りませんけど、あの額装だけでも何両もするでしょ。そう考えれば、中身が紙切れでも損はしませんよ。私もあんなものは扱ったことがなくて、一度は断ったんですけど、近所付き合いだから仕方なく引き受けたんです。でも、年末にそんなものを置いておくのも迷惑で、いくらでも手付金が付いたら売ろうと思って、通りかかった屑屋を呼んで、店の前で掛け軸を見せてたんです。そこにこの人が現れて、自分で値段をつけて、無理やり買って行ったんです。食わせ物も何もあったもんじゃありませんよ」
「それはその通りですね。万さんも欲張りで、時々痛い目にあってますよ。それで、その掛け軸はどこから出たんですか?」
「生まれは知りませんけど、持って来たのは裏の大工のお豊さんです」

原文 (会話文抽出)

「おお、立派な帝釈様がある。それは幾らですえ」
「わたしはあれを買った万さんを識っているが、安物買いの銭うしないで、とんだ食わせものを背負い込んだと、しきりに滾しぬいていましたよ。はははははは」
「だって、おまえさん」
「まったくお値段との相談ですよ、中身は善いか悪いか知りませんが、あの表装だけでも三歩や一両の値打ちはありますからね。して見れば、中身は反古だって損はない筈です。わたしもあんなものは手がけたことが無いので、一旦はことわったのですけれど、近所ずからで無理にたのまれて、よんどころなく引き取ったのですが、年の暮にあんな物を寝かして置くのも迷惑ですから、二百でも三百でも口銭が付いたら売ってしまう積りで、通りかかった屑屋の鉄さんを呼んで、店のまえであの掛地をみせているところへ、横合いからあの人が出て来て、何でもおれに売ってくれろと、自分の方から値をつけて、引ったくるように買って行ってしまったんですから、食わせ物も何もあったもんじゃありませんよ」
「そりゃあお前さんの云う通りだ。万さんもなかなか慾張っているからね。ときどき生爪を剥がすことがあるのさ。そこで、あの掛地はどこの出物ですえ」
「さあ、生まれは何処だか知りませんが、ここへ持って来たのは、裏の大工の家のお豊さんですよ」


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