GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「いますいます」
「『又蔵』って名前のステキなお兄さんなんです」
「へえ、又蔵か」
「おなごさん、知ってるんすか?」
「ちょっとは」
「でも、あの人はだいぶ遊び人らしいから、騙されんようにね」
「ホンマにそうなんです」
「この先月も着物作ってやるって言って、いい加減に人をだましてるんですよ。もうすぐ春なのに。作るなら作ってよ、手付けぐらい預けなきゃ、どこの呉服屋も話になんないでしょ。なのに、明日やる、明後日やるって口ばっかりで、いいかげんに扱ってるんですもん。ムカつきます」
「まあまあ、我慢しようよ。でも、年収3両で1両とか2両出すのは大変なんだって。あなたもお気に入りでしょ。そこをわかってあげなよ、ケチくさい」
「だって、又さんがいうには、近いうちに入ってくるお金があるんだとか。こっちも期待しちゃうじゃないですか。嘘かな?」
「そう聞かれても困っちゃうけど、又蔵のことだし、全部嘘じゃないとは思うよ。もう少し待ってみようよ」
「まあ、安ちゃん。そろそろいいでしょ。親父さんに迷惑だ。又蔵のことは私が責任持ちますから、安心してください」
原文 (会話文抽出)
「なにしろお楽しみだね。で、その惚気の相手というのはやっぱり朝顔屋敷にいるのかえ」
「いるんですとも」
「お部屋にいる又蔵さんという小粋な兄さんなんですよ」
「むむ。又蔵か」
「お前さん、御存じですかえ」
「まんざら知らねえこともねえ」
「だが、あの男はなかなか道楽者らしいから、欺されねえように用心しねえよ」
「ほんとうにそうですよ」
「この暮には着物をこしらえてやるなんて、好い加減に人を欺くらかしているんですよ。お前さん。節季はもう眼の前につかえているんじゃありませんか。春着をこしらえるなら拵えるように、せめて手付けの一両ぐらいこっちへ預けて置いてくれなけりゃあ、どこの呉服屋へ行ったって話が出来ませんよ。それをあした遣るの、あさって渡すのと口から出任せのちゃらっぽこを云って、好いように人をはぐらかしているんですもの。憎らしいっちゃありません」
「まあまあ、堪忍してやるさ。そう云っちゃあ何だけれど、一年三両の給金取りが一両、二両の工面をすると云うのは大抵のことじゃあねえ。お前さんも可愛い男のことだ。そこを察してやらにゃあ邪慳だ」
「だって、又さんの話じゃあ、なんでも近いうちに纏まったお金がふところへはいると云うんですもの、こっちだって的にしようじゃありませんか。それとも嘘ですかしら」
「そう訊かれても返事に困るが、あの男のことだから丸っきりの嘘でもあるめえ。まあ、もう少し待ってやることさ」
「まあ、安ちゃん。もう好い加減におしよ。親分さんが御迷惑だあね。又さんのことはあたしが受け合うから安心しておいでよ」