GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「よく知りません。なんでも出家と虚無僧が2人ずつ、古い井戸の中で死んでたそうで……」
「そうだ、そうだ」
「つまりそれだけのことで、ほかには何の手がかりもねぇ。体に傷がないのを見ると、自分たちで飛び込んだようにも思われるが、坊主と虚無僧の心中でもあるまい。この辺じゃ専ら仇討の噂を立ててるが、それもどうだか」
「かたき討……」
「相手が虚無僧だけにあんな噂も出るんだろうな。仇2人が出家に化けて、あの古寺に潜んでる所へ、虚無僧2人が訪ねて来て、親か兄弟の仇討、いざ尋常に勝負勝負の果てが、双方相討ちになったんだろうというのだが……。それにしても、4人の死体がどうして井戸から出てきたのか、その理屈が呑み込めない、第一、どの死体にも傷がないのが不思議だ」
「その寺には金でもありますかえ」
「この辺でも有名な貧乏寺さ。いくら近眼の泥棒だって、あの寺に盗みに入ろうとは思わないだろう。盗みに入ったとしても、坊主も虚無僧もみんなえらい男ばっかりだ。寝込みを襲ったとしても、そろいもそろって殺されて、井戸に捨てられてしまうなんて、ちっと信じられない話だ」
「その虚無僧は、前から寺に泊まってたんですかえ」
「今までは住職と納所くらいしかいなかった。そこにどこからか虚無僧2人が入り込んで来て、一緒に死んでいたんだから、何がどうしたのか分からない」
「ふむ」
「それに関連した話を1つしよう」
「死体が発見されたのは昨日の朝のことだが、虚無僧はその4日前の十五夜の晩から泊まっていたらしい。それを知っている者は、この辺にたった1人いるんだが、うっかりしゃべって面倒なことになったら大変と思って、口を閉ざしてるんだ。そいつの話によると、ほかに若い女が1人いたそうだ」
「若い女……」
「若い女だ」
「ところが、その若い女だけは死んでない。面白いじゃないか」
「元八というのは、この家によく遊びに来る奴で、昨日も私のところへ来て、実は十五夜の晩にこうこうこうことがあったと、内緒で話してくれたんだ」
「緑屋の爺さんの扱いが上手なんで、思いの外儲かってしまった。これから本気で稼がないと」
「真っ直ぐにその竜濤寺っていうのに行ってみますかえ」
「いや、まあ、名主のところにも顔を出しておこう。そうしないと、あとで何か問題になる」
「これから現場に行きたいのですが、誰か案内してくれますか?」
原文 (会話文抽出)
「竜濤寺の一件は大抵知っていなさるだろうね」
「よく知りません。なんでも出家が二人、虚無僧が二人、古井戸のなかで死んでいたそうで……」
「そうだ、そうだ」
「詰まりはそれだけのことで、ほかにはなんにも手がかりはねえ。からだに疵のねえのを見ると、自分たちで身を投げたようにも思われるが、坊主と虚無僧の心中でもあるめえ。ここらじゃあ専ら仇討という噂を立てているが、それもどうだかな」
「かたき討……」
「相手が虚無僧だけに、芝居や講釈から割り出して、かたき討なぞという噂も出るのだ。仇ふたりが出家に姿をかえて、あの古寺に忍んでいるところへ、虚無僧ふたりが尋ねて来て、親か兄弟のかたき討、いざ尋常に勝負勝負の果てが、双方相討ちになったのだろうというのだが……。それにしても、四人の死骸がどうして井戸から出て来たのか、その理窟が呑み込めねえ、第一、どの死骸にも疵のねえのが不思議だ」
「その寺には金でもありますかえ」
「ここらでも名代の貧乏寺さ。いくら近眼の泥坊だって、あの寺へ物取りにはいるような間抜けはあるめえ。万一物取りにはいったにしても、坊主も虚無僧もみんな屈竟の男揃いだ。たとい寝込みを狙われたにしても、揃いも揃ってぶち殺されて、片っ端から井戸へ抛り込まれてしまうというのは、ちっと受け取りかねる話じゃあねえか」
「その虚無僧は、前から寺に泊まっていたんですかえ」
「今までは住職と納所ばかりだ。そこへ何処からか虚無僧二人が舞い込んで来て、一緒に死んでいたんだから、何がどうしたのか判らねえ」
「ふうむ」
「それに就いて少し話がある」
「死骸の見付けられたのはきのうの朝のことだが、虚無僧はその四日前の十五夜の晩から泊まり込んでいたらしい。それを知っている者は、ここらにたった一人あるんだが、うっかりした事をしゃべって飛んだ係り合いになっちゃいけねえと思って、黙って口を拭っているのだ。そいつの話によると、ほかに一人の若けえ女が付いていたそうだ」
「若けえ女……」
「むむ、若けえ女だ」
「ところが、その若けえ女だけは死んでいねえ。おもしれえじゃねえか」
「元八というのは、ここの家へも始終遊びに来る奴で、ゆうべも私のところへ来て、実は十五夜の晩にこうこういうことがあったと、内証で話して聞かせたのだ」
「緑屋の爺さんのお扱いがいいので、思いのほかに油を売ってしまった。これから本気になって稼がなけりゃあならねえ」
「真っ直ぐにその竜濤寺というのへ行ってみますかえ」
「いや、まあ、名主のところへ顔を出して置こう。それでねえと、なにかの時に都合の悪いことがある」
「これから現場へ踏み込んでみたいのですが、誰か案内して貰えますまいか」