芥川龍之介 『好色』 「どうかこちらに御待ち下さいまし。今に皆様…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『好色』

現代語化

「ここで待っていてください。皆様がお休みになれば、お目にかかれるそうです」
「やっぱ俺って天才だな」
「さすがの侍従もついに落ちたか。やっぱり女ってのは情に弱いもんな。そこへ親切ぶれば、コロッと落ちる。こんなコツを知らないから、義輔や範実はどうしても、――待てよ。でも今夜会えるってのは、なんか話が上手く行き過ぎてるよな。――」
「でも会わないのに、会えるってわけないよな。すると俺のひがみか? だいたい60通以上も手紙を送っても、返事一つくれなかったんだし、ひがむのも当然だよ。でもひがみじゃないとしたら、――よくよく考えてみると、ひがみじゃない気もしなくもない。いくら親切にされても、今まで相手にしなかった侍従が、――相手は俺だからな。これくらい平伏されたら、急に気持ちが変わるかもしれない」

原文 (会話文抽出)

「どうかこちらに御待ち下さいまし。今に皆様が御休みになれば、御逢ひになるさうでございますから。」
「やつぱりおれは智慧者だな。」
「さすがの侍従も今度と云ふ今度は、とうとう心が折れたと見える。兎角女と云ふやつは、ものの哀れを感じ易いからな。其処へ親切気を見せさへすれば、すぐにころりと落ちてしまふ。かう云ふ甲所を知らないから、義輔や範実は何と云つても、――待てよ。だが今夜逢へると云ふのは、何だか話が旨すぎるやうだぞ。――」
「しかし逢ひもしないものが、逢ふと云ふ訳もなささうなものだ。するとおれのひがみかな? 何しろざつと六十通ばかり、のべつに文を持たせてやつても、返事一つ貰へなかつたのだから、ひがみの起るのも尤もな話だ。が、ひがみではないとしたら、――又つくづく考へると、ひがみではない気もしない事はない。いくら親切に絆されても、今までは見向きもしなかつた侍従が、――と云つても相手はおれだからな。この位平中に思はれたとなれば、急に心も融けるかも知れない。」


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