芥川龍之介 『好色』 「兎に角あの女には根負けがする。たとひ逢ふ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『好色』

現代語化

「とにかくあの女には参っちゃうよ。たとえ会えなくても、俺と一度話せれば、絶対落とせるんだけどさ。まして一夜だけでも会えれば、――あの摂津も小中将も、まだ俺を知らないうちは男嫌いを貫いてたもんだ。それが俺にかかると、あの通り惚れちまうんだろ? 侍従だって神様じゃねーんだから、舞い上がらないわけがねーべ?でもあの女はいざとなっても小中将みたいに恥ずかしがらないだろうな。かといって摂津みたいに妙に気取るタイプでもないだろうし。きっと袖を口元に合わせて、目でニコニコ笑いながら――」
「殿様」
「どうせ夜のことだから、行灯か何かが灯ってるだろう。その灯りがあの女の髪に――」
「殿様」

原文 (会話文抽出)

「兎に角あの女には根負けがする。たとひ逢ふと云はないまでも、おれと一度話さへすれば、きつと手に入れて見せるのだがな。まして一晩逢ひでもすれば、――あの摂津でも小中将でも、まだおれを知らない内は、男嫌ひで通してゐたものだ。それがおれの手にかかると、あの通り好きものになるぢやないか? 侍従にした所が金仏ぢやなし、有頂天にならない筈はあるまい。しかしあの女はいざとなつても、小中将のやうには恥しがるまいな。と云つて又摂津のやうに、妙にとりすます柄でもあるまい。きつと袖を口へやると、眼だけにつこり笑ひながら、――」
「殿様。」
「どうせ夜の事だから、切り燈台か何かがともつてゐる。その火の光があの女の髪へ、――」
「殿様。」


青空文庫現代語化 Home リスト