GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『黄粱夢』
現代語化
「ええ」
「夢を見ましたか?」
「見ました」
「どんな夢を見ましたか?」
「何だかすごく長い夢でした。最初は清河の崔さんの娘と一緒になりました。綺麗でしとやかな人でした。それで数年後、進士の試験に合格して、渭南の役人になりました。それから、監察御史やら起居舎人知制誥やらをやって、次々と中書門下平章事になりましたが、讒言を受けて殺されそうになったところを助かって、驩州に流されることになりました。そこに5、6年いたでしょうか。やっと冤罪が晴れて、また呼び戻されて、中書令になって、燕国公に封じられましたが、その時はもう大分年をとっていたと思います。子供が5人、孫が何十人もいました」
「それからどうしました?」
「死にました。確か80歳を超えていたように思います」
「では、栄枯盛衰も浮き沈みも、全部味わったわけですね。それはよかった。生きるとはどういうことか、あなたの夢とそんなに変わらないんです。これであなたの人生の執着も、冷めたでしょう。得たり失ったりすることや、死んだり生きることのことも、よくわかれば、そんなにつまらないものはないんです。そうではないでしょうか」
原文 (会話文抽出)
「眼がさめましたね。」
「ええ」
「夢をみましたろう。」
「見ました。」
「どんな夢を見ました。」
「何でも大へん長い夢です。始めは清河の崔氏の女と一しょになりました。うつくしいつつましやかな女だったような気がします。そうして明る年、進士の試験に及第して、渭南の尉になりました。それから、監察御史や起居舎人知制誥を経て、とんとん拍子に中書門下平章事になりましたが、讒を受けてあぶなく殺される所をやっと助かって、驩州へ流される事になりました。そこにかれこれ五六年もいましたろう。やがて、冤を雪ぐ事が出来たおかげでまた召還され、中書令になり、燕国公に封ぜられましたが、その時はもういい年だったかと思います。子が五人に、孫が何十人とありましたから。」
「それから、どうしました。」
「死にました。確か八十を越していたように覚えていますが。」
「では、寵辱の道も窮達の運も、一通りは味わって来た訳ですね。それは結構な事でした。生きると云う事は、あなたの見た夢といくらも変っているものではありません。これであなたの人生の執着も、熱がさめたでしょう。得喪の理も死生の情も知って見れば、つまらないものなのです。そうではありませんか。」