島崎藤村 『新生』 「そういうお父さんの側に附けて置いては不可…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『新生』

現代語化

「そういうお父さんの側につけておいてはおかしいーどうしても捨吉は他へ修業に出さなきゃいけないーその考えが俺にあったから、お父さんに勧めてお前を東京へ送ることにした。その親の子だ。しっかり考えてよくやってもらわなきゃいけないというのは、そこだ。まあ俺なんかから見ると、お前みたいに一婦人に迷うなんてことが、とんでもない」
「そうお兄さんのように言っても困ります」
「ここまで出てくるには私だっていろいろなところを通ってきた末です。一婦人とは言いますけれど、私はそんなに軽く見ていません。もしそんなことを言ったら、一生互いに苦労する奥さんだって一婦人じゃありませんか」
「いや、そこがおかしいと言うんだよ。同じ苦労するんだったら、もっと大きなことのために苦労したほうがいいじゃないか。もっと世の中のために役立つとか、人間全体のために益になるとか」
「私もそう思わないわけじゃありません。でも人間のためと言いましても、自分のすぐ隣にいる人から始めるよりほかありませんよね。そこで私はなんとかして節ちゃんを生かしたいとも考えるようになりましたし、子どもも自分で育ててみようという気持ちになりました」
「どうも、お前のはかなりこじれてきたんだなあ……」
「そこでだー俺は今度、節ちゃんを台湾へ連れて行くつもりだーどうだ、そっちの意見は」
「あ、そうですか、連れてってくださいませんか。ぜひそれは私からもお願いしたかったんです」

原文 (会話文抽出)

「そういうお父さんの側に附けて置いては不可――どうしても捨吉は他へ修業に出さなけりゃ不可――その考えが俺にあったから、お父さんに勧めて貴様を東京へよこすことにした。その親の子だ。余程考えてよく行って貰わんけりゃ成らんというのは、そこだ。まあ俺なぞから見ると、貴様のように一婦人に迷うなんてことが、てんで可笑しい」
「そう兄さんのように言っても困ります」
「ここまで出て来るには私だってもいろいろなところを通って来た揚句です。一婦人とは言いますけれど、私はそう軽く視ていません。もしそんなことを言ったら、一生互に苦労する細君だっても一婦人じゃありませんか」
「いや、そこが可笑しいと言うんだよ。同じ苦労するならばだナ、もっと大きなことの為に苦労するが可いじゃないか。もっと世の中のために成るとか、人間全体のために益になるとかサ」
「私もそう思わないじゃ有りません。しかし人間のためと言いましても、自分のすぐ隣に居る人から始めるより外に仕方がないと思ったんです。そこで私はどうかして節ちゃんを生かしたいとも考えるように成りましたし、子供も自分で育てて見る気に成ったんです」
「どうも、貴様のは随分曲りくねって来ているんだなあ……」
「そこでだ――俺は今度、節ちゃんを台湾へ連れて行くつもりだ――どうだ、そっちの意見は」
「あ、そうですか、連れてって下さいますか。是非それは私からもお願いしたいと思っていたんです」


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