島崎藤村 『新生』 「まあ廻りくどいことは訊くまい……」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『新生』

現代語化

「まあ回りくどいことは聞かない……」
「お前が旅に出かけるまでのことは俺の方では問わない。旅から帰ってきてだな、それからまた節ちゃんと関係があったか、どうかーそれを聞こう」
「ありました」
「それはどうも怪しからん。国に帰ってきてからまた関係をつけるなんて、実に言語道断だ。お前も意志の弱い男じゃないか」
「そりゃもともと弱いものです。弱いことは自分でもわかっています。私から義雄さんへ宛てて手紙を進呈しておきました。あの中にはいくらか自分の気持ちも出ているつもりですが、あれをお兄さんは読んで見てくださいましたか。私が旅から帰ってきますと、義雄さんの家の様子といい、節ちゃんの様子といい、なかなか口にも言えないようなものでした。まるで節ちゃんは半分死んでる人でした。まあ私は人一人を哀れむような量見を起こしたんですね」
「関係なしに、そういう量見を起こしたなら、そりゃ美しいーそりゃ立派なものだ」
「でも、関係とは言いますけれど、男と女の間でそういうことにでもならなきゃ本当に相手のものを救うような気にもならないようなものじゃありませんか。私もひどくそういう関係を卑しんだ時代も有りました。そこからいろいろな苦しみも起って来たようなものですが、今ではお兄さんたちのようにそれほど卑しいものとは思っていません」
「そういう難しいことは俺は知らない。俺はそういうことを言いに来たんじゃない。お前が一婦人の愛に溺れていることを言いに来たんだ」

原文 (会話文抽出)

「まあ廻りくどいことは訊くまい……」
「貴様が旅に出掛けるまでのことは俺の方では問わない。旅から帰って来てだナ、それから復た節ちゃんと関係があったか、どうか――それを訊こう」
「ありました」
「それはどうも怪しからん。国へ帰って来てから復た関係をつけるなんて、実に言語道断だ。貴様も意志の弱い男じゃないか」
「そりゃもとより弱いものです。弱いことは自分でも承知しています。私から義雄さんへ宛てて手紙を進げて置きました。あの中にはいくらか自分の心持も出ているつもりですが、あれを兄さんは読んで見て下すったでしょうか。私が旅から帰って来ますと、義雄さんの家の様子といい、節ちゃんの様子といい、なかなか口にも言えないようなものでした。まるで節ちゃんは半分死んでる人でした。まあ私は人一人を憐むような量見を起したんですね」
「関係なしに、そういう量見を起したなら、そりゃ聞える――そりゃ立派なものだ」
「しかし、関係とは言いますけれど、男と女の間でそういうことにでも成らなけりゃ本当に相手のものを救うような気にも成らないようなものじゃ有りませんか。私もひどくそういう関係を卑しんだ時代も有りました。そこからいろいろな苦しみも起って来たようなものですが、今では兄さん達のようにそれほど卑しいものとは思っていません」
「そういうむつかしいことは俺は知らない。俺はそういうことを言いに来たんじゃない。貴様が一婦人の愛に溺れていることを言いに来たんだ」


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