島崎藤村 『新生』 「ですから、お父さんもこないだそう言ってい…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『新生』

現代語化

「ですから、お父さんもこないだそう言っていましたよ」
「節ちゃんの様子って、まるでウロウロしてるみたいだってー」
「気持ちの違うものの中にいると、そうなるよ。どうしていいかわからなくなるよ」
「いろいろ言われすぎちゃって、ボケてでもいるよりほかにしようがないからね」
「つまり、節ちゃんの気持ちがお父さんには理解できないから仕方がないんだよ」
「そうかもしれませんけれど、お父さんの気持ちも節ちゃんには理解できません」
「まあ、俺に言わせると、節ちゃんは父親に近づきすぎたんだね。少なくともお前よりは、節ちゃんのほうが父親に近づいてみた方だね。なんだか節ちゃんもそんなことを言ってたよ。あの代筆をさせられるまでは、お父さんのことがよくわからなくて、むしろ好きだったって……」
「一体、節ちゃんは叔父さんにそっくりですね」
「そうかなぁ……俺に似てるかなぁ」
「何事もこう物事をひねって考えるところが、それはよく叔父さんに似てますよ。そういう人たちが二人揃ってしまったんですから、どうにも仕様がない」
「お前たちは節ちゃんが地獄の方へでも歩いていくように思ってるんだろう。ところが節ちゃんは、自分では極楽の方へ歩いてるつもりでいるーそんなに見当が違っているんだもの」
「何ですか知りませんけれど、少し普通じゃありませんよねえ」

原文 (会話文抽出)

「ですから、お父さんもこないだそう言っていましたよ」
「節ちゃんの様子と来たら、まるで洒蛙々々してるなんて――」
「心持の違ったものの中に居ると、そう成るよ。どうして可いか解らなく成るよ」
「あんまりいろいろなことを言われて御覧、トボケてでもいるより外に仕方が無いからね」
「つまり、節ちゃんの心持がお父さんには解らないから仕方が無いサ」
「そうかも知れませんけれど、お父さんの心持も節ちゃんには解っていません」
「まあ、俺に言わせると、節ちゃんはお父さんに接近し過ぎたんだね。すくなくもお前よりは、節ちゃんの方がお父さんに接近して見た方だね。何だか節ちゃんもそんなことを言っていたよ。あの代筆をさせられるまでは、お父さんのことがそうよく解らなくって、反って好かッたって……」
「一体、節ちゃんは叔父さんによく似てますね」
「そうかなあ……俺に似てるかなあ」
「何事でもこう物をひねって考えるようなところが、それはよく叔父さんに似てますよ。そういう人達が二人揃ってしまったんですから、どうにも仕様がない」
「お前達は節ちゃんが地獄の方へでも歩いて行くように思っているんだろう。ところが節ちゃんは、自分じゃ極楽の方へ歩いてるつもりでいる――そんなに見当が違って来ているんだもの」
「何ですか知りませんけれど、少し普通じゃ有りませんのねえ」


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