島崎藤村 『新生』 「よく私は吾家のお父さんにそう言われますよ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『新生』

現代語化

「よく私はうちの父さんにそう言われますよ――愛宕下に遊びに行くと、まる一日二日ふぬけになるみたいだって」
「お前もまたつまらないこと言わないで、寝たりなんかしちゃだめだよ」
「なんか姉ちゃんが帰ってきてから、ますますお父さんの様子がおかしくなって。私は人間じゃないみたいなことを言われて……」
「何て言われようと関係ないじゃないかーそんなこと気にしててもしょうがない。そういうイヤな反感を捨てな」
「…………」
「そこがお前、懺悔の心じゃないか。お寺とか尼寺までいかなくても、宗教ってあるでしょ。谷中の家をすぐお寺だと思えないかもしれないけど、俺はそう思うんだ。反抗したって無駄だって思ったら、そういう反てつ心を捨てちゃいな」
「…………」
「お前と俺はもうここまで来たんだ。行くところまで行くしかないよ。こんなへこんだ調子じゃ、やっていけないよ。もっと前向きに考えようよ」

原文 (会話文抽出)

「よく私は吾家のお父さんにそう言われますよ――愛宕下へ行って帰って来ると、まるで一日二日は腑抜けのように成ってしまうなんて」
「お前もまた面白くないなんて、寝たりなんかしちゃ不可サ」
「なんですか姉さんが帰って来てから、余計にお父さんの調子が違って来ました。私は人間じゃ無いようなことを言われて……」
「何と言われたって可いじゃないか――そんなことを気にしたところで仕方がない。そういう苦い反撥心を捨てるサ」
「…………」
「そこがお前、懺悔の心じゃないか。何も修道院や尼寺まで行かなくたって、宗教というものは有るものだろう。谷中の家を直ぐに寺院だと観る訳には行かないものかね。俺はまあそう思うんだが、反抗したところで無駄だと思ったら、そういう反撥心を捨てて掛るんだね」
「…………」
「お前と俺とは、もうここまで来たものだ。行くところまで行くより外に仕方が無いサ。こんな日蔭者のような調子で、これが遣り切れるものかね。もっと生きて出ることを考えようじゃないか――」


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