島崎藤村 『新生』 「へえ、その家では釣堀をやってるのかね。一…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『新生』

現代語化

「へぇ、あそこの病院で釣り堀やってるんだ。鯉でも釣りに行くフリして、そのうち遊びにいってみようかな」
「でも、誰にどこで会うかわかんないもんですねー」
「あの田舎で世話になった女のお医者さんのこと、パリに手紙に書いたでしょ。その人に会ったの。お父さんの眼科の病院で……その人も今は眼科の助手さんみたい」
「お母さんは、どうなんだろう」
「お母さんって『それ』知ってるのかなー」
「お母さんは知ってるでしょ」
「テルはどうだろう」
「姉ちゃんも知ってるかも。ちょうど姉ちゃんが産後で帰ってきたとき、私はこの家にいなかったからね。姉ちゃんが父さんに聞いたら母さんに聞きなさいって言われ、母さんに聞いたら父さんに聞きなさいって言われたらしくてさー姉ちゃんも不思議に思ったみたい。あのときは父さんまだ名古屋だったからね」
「じゃあ、お愛ちゃんは?」
「さあ、根岸の姉ちゃんはどうかなー……」

原文 (会話文抽出)

「へえ、その家では釣堀をやってるのかね。一つ鯉でも釣りに行くような顔をして、そのうちに訪ねて行って見るかナ」
「しかし、何処でどういう人に逢うか真実に解らないものですね――」
「あの田舎で大変御世話になった女のお医者さまのことを巴里へ書いてあげましたろう。あの人に逢いましたよ。お父さんの行く眼の病院で……あの人も今では眼科の方の助手なんでしょう」
「お前のお母さんは、一体どうなんだろう」
「お母さんは『あの事』を知ってるんだろうか――」
「お母さんは知っていましょうよ」
「輝はどうだろう」
「姉さんも知っているかも知れませんよ。丁度姉さんがお産で帰って来た時は、私はこの家に居ませんでしたからね。姉さんがお父さんの方へ行って聞けば、お母さんに行ってお聞きと言われるし、お母さんの方へ来て聞けば、お父さんに行ってお聞きと言われたなんて――姉さんだって不思議に思ったんでしょう。あの時分はお父さんは未だ名古屋でしたからね」
「そんなら、お愛ちゃんは?」
「さあ、根岸の姉さんもどうですかねえ……」


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