GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 島崎藤村 『新生』
現代語化
「パリにいる俺たちの立場は、まるで東京の神田にいる中国人留学生みたいなんですよ。よく俺はそんなこと思うよ。これじゃホームシックになるのも当然だと思うよ。今になって考えると、あんなに中国人留学生を冷たくするのは間違いだったな」
「神田あたりを歩いてた時分にはそうも思いませんでしたけどね。ヨーロッパに来てみてそれがわかりました」
「あいつらだって中国ではみんなそれなりにいいとこの出身なんでしょう。そういう人たちが旅行者扱いされて、大金を使って、しかも惨めな思いをするかと思うと、本当に気の毒になるよ。金を使って、惨めな思いをするほど嫌なものはないね。私が国を出る時に、『ヨーロッパに行ってみると、自分たちは出世したのか落ちぶれたのかわからなくなる』って言った人もいたっけ」
原文 (会話文抽出)
「酷いものですな」
「巴里にあるわれわれの位置は、丁度東京の神田あたりにある支那の留学生の位置ですね。よく私はそんなことを思いますよ。これでは懐郷病にも罹る筈だと思いますよ。今になって考えると、あんなに支那の留学生なぞを冷遇するのは間違っていましたね」
「神田辺を歩いてる時分にはそうも思いませんでしたがなあ。欧羅巴へ来て見てそれが解りました」
「あの連中だって支那の方では皆相当なところから来てる青年なんでしょう。その人達が旅人扱いにされて、相応な金をつかって、しかもみじめな思いをするかと思うと、実際気の毒になりますね。金をつかって、みじめな思いをするほど厭なものはありませんね。私が国を出て来る時に、『欧羅巴へ行って見ると、自分等は出世したのか落魄しているのか分らない』と言った人も有りましたっけ」